顔の左側に対してより魅力を感じる
そこで米ウェイク・フォレスト大学のケルシー・ブラックバーン氏らの研究チームは、観察者の観点からこの現象を検討しました。
実験には大学生12名が参加しました。
撮影では、両目が写り、顔の特徴が把握できる程度に真正面から左右に逸れた位置から、「できる限り自然に微笑んだ状態」の参加者の顔の右側と左側の写真が撮られています。
そして別に雇われた大学生37名に、瞳孔の大きさを測定する装置を付けた状態で、顔写真の美しさを評価してもらいました。
瞳孔は興味・関心が強い刺激を見た時に拡大し、不快な刺激を見た時に収縮することから、顔の向きの左右で快・不快の感じ方が身体的に変化するかを見ています。
もし左右で被写体の感情の表出に差があった場合、片方の顔に対しより瞳孔が拡大するような結果になるはずだと予測しました。
実験の結果、顔の右側と比較して左側のほうを見た時に、瞳孔がより拡大し、綺麗だと感じていたのです。
また顔画像を鏡像と同じになるように左右を反転した画像でも、顔の右側よりも左側に対し、瞳孔がより拡大し、美しいと感じていました。
研究チームは「この結果は、被写体の感情が顔の左側に強く現れることが多く、観察側はそれをより魅力的であると評価することを示唆している。」と述べています。
ではなぜ顔の左側に好印象を抱き、美しいと感じる傾向が私たちにはあるのでしょうか。
この現象には脳の左右差が関わっていると考えられています。
それは身体の左側は右半球が、身体の右側は左半球によって制御されていることから、右半球のほうが感情の処理に優れているため、顔の左側に強く感情が現れているのではないかというものです。
研究チームは「これは、感情の制御に特化している右半球優位性の概念や脳の側性化(左右の大脳半球で司る分野が違うこと)を、新たに裏付けるものである」と述べています。
前述した自撮りの際に顔の左側をカメラに向ける傾向が男性は弱いことに関しては、女性と比べて男性は感情表出を控えるようにしている可能性があると言えるでしょう。
多くの人が顔の左側を向けて自撮りするという事実は、自身の顔についても無意識に左側の方が魅力的に見えると感じていることを示唆しています。
男性の例から見ると、感情の表出があまりない人には差が小さくなる傾向はあるのかもしれません。
しかし、もし特に気にせず顔の右側を向けて自撮りししていたという人は、顔の左側をカメラに向けるように写真を撮るだけで、周りから好印象を抱かれる可能性が高くなるかもしれません。