「意思決定という現象」はどうやって発生するのか?
私たちの脳は生きている限り、あらゆる場面で「意思決定」を行い続けています。
T字路で左右のどちらに曲がるか、今日の夕食をパスタにするかハンバーグにするか、好きな人に気持ちを打ち明けるか、隠したままにするか…
私たちの人生において、1日たりとも意思決定が下されない日は存在しません。
これまで積み重ねられてきた研究によって、意思決定の中枢が帯状皮質と呼ばれる大脳皮質の裏側がかかわっていることが徐々にわかってきました。
2015年に日本の理化学研究所から発表された研究でも、この領域が将棋の棋士たちにおいて、攻撃か防御の選択を直感的に下す戦略決定の中枢であることが示されています。
また近年の研究では帯状皮質の後ろ半分にあたる、後帯状皮質(PCC)と呼ばれる領域が意思決定で大きな役割を果たしていることが明らかになってきました。
また後帯状皮質で行われる意思決定の仕組みは、単なる神経回路の「オン・オフ」といった単純なものではなく、多数のニューロンが含まれる複雑な神経ネットワークの働きによって行われることも判明しました。
ただ、たとえば左右の選択を行うときなど、これら複雑な神経ネットワークを構成するニューロンが、どのように繋がっており、どのように発火したら「意思」の「決定」となるかは謎でした。
(※理論研究などでは、意思決定の仕組を予測するいくつもの仮説が提案されてきましたが、実際に確かめられてはいませんでした)
そこで今回、ハーバード大学の研究者たちは、T字路を進むマウスが意思決定をするときの脳活動を詳細に調べ、神経ネットワークの動きを調べることにしました。
つまり、意思決定の「基礎的ルール」を探索するわけです。