スイカの食べ過ぎで「高カリウム血症」になる
スイカは果肉の90%以上が水分であり、添加物だらけの加工食品や高脂肪のファストフードなどに比べると、健康上に何の害悪もないように思われます。
しかし、腎臓が悪い人にとっては致命的になる可能性があります。
その原因となるのがスイカに豊富に含まれている「カリウム」です。
カリウムはすべての細胞の正常な機能を維持するのに必要なミネラルです。
細胞内の体液量の調節や心臓の鼓動の調節、筋肉の収縮や神経刺激の伝達など、人体の活動に欠かせない役割を担っています。
一般成人の正常な血中カリウム濃度は3.6〜5.2mmol/L(※)です。
(※ 1mol/Lは溶液1Lに溶けている物質量の単位で、1mmol/Lはその1000分の1の単位)
腎臓がちゃんと機能していれば、多くのカリウムを摂取しても尿と一緒に排出されて、血中のカリウム濃度のバランスを保つことができます。
ところが慢性腎臓病のように腎臓の働きが悪くなっていると、カリウムが尿として排出されず、体内にどんどん溜まっていきます。
そして血中カリウム濃度が5.5mmol/L以上になると起こるのが「高カリウム血症」です。
高カリウム血症になると筋肉が正常に収縮しなくなり、手足の痺れ、嘔吐などの胃腸症状、体に力が入らない脱力感、そして心臓の働きに異常が出る不整脈や、最悪の場合は心停止に陥る恐れがあります。
つまり、腎臓の悪い人がスイカを食べ過ぎるとカリウムが体内に蓄積して、高カリウム血症を引き起こすリスクが高まるのです。
研究チームは新たな症例研究で、実際に起きたエピソードを挙げています。
そこでは、慢性腎臓病と2型糖尿病を患う56歳の男性が失神後に集中治療室に搬送されたケースが報告されました。
男性の心拍数は1分間に20回という危険な数値にまで下がり(正常値では1分間に60〜100回)、血中カリウム濃度は7mmol/Lに達していたという。
男性は高カリウム血症の治療により何とか一命を取りとめましたが、のちに過去2カ月の間に大量のスイカを毎晩食べていたことが判明しました。
医師らは、慢性腎臓病と糖尿病により腎臓の働きが低下していた中で、カリウムが排出できずに体内に蓄積して、高カリウム血症を発症したのだろうと診断しています。
この他に、腎臓の働きが低下している72歳の男性が約1カ月間、毎日2杯のスイカジュースを飲んでいたことで不整脈を起こしたケースも報告されました。
こうした危険性があるため、腎臓の悪い人はあまりスイカを摂取するべきではないと指摘されています。
またカリウムはスイカだけでなく、ほうれん草、トマト、ブロッコリー、じゃがいも、昆布、バナナなど多くの食品に豊富に含まれています。
ただカリウムは水に溶けやすい性質があるので、水にさらしたり茹でたりすることでカリウム量を減らすこともできます。
腎臓の調子がよくない方は、これらの食品を控えめにしたり、調理方法を工夫することでカリウムの摂取量を調節することが大事でしょう。