ある種の政治的立場は「生まれつき」決まっている⁈
本調査は1945〜1960年の間にノルウェーで生まれた双子のペア、延べ2000人近くを対象にデータを収集しました。
参加者にはそれぞれ、性格特性のビッグファイブ(開放性、誠実性、外向性、協調性、神経症的傾向)・右翼権威主義・社会的支配志向性の測定を行ってもらいます。
その後、2つの心理特性に関連する政治的態度を評価するために、具体的な4つの政策について賛成か反対かを7段階で評価してもらいました。
その4項目は「移民の強制送還」「発展途上国への資金援助の削減」「庇護希望者の国への受け入れ拡大」「厳格な入国管理の実施」です。
双子は同性のペアを無作為に選んでおり、このデータについて、一卵性双生児と二卵性双生児間の相関パターンを比較分析しました。
その結果、右翼権威主義と社会的支配志向性の傾向は、主に生まれつきの遺伝的要因との関連が高く、性格特性のビッグファイブは個人の一般的な態度や行動の形成に影響を及ぼしますが、政治的スタンスとの関連性は低いことが示されました。
この結果を受けて、チームは「私たちの政治的スタンスは”単に性格特性の延長上にある”という従来の考えとは異なり、遺伝子の重複によって説明されることを示唆している」と述べています。
さらに、右翼権威主義と社会的支配志向性の傾向は、相互に有意な遺伝的関連性を持っており、これらの心理特性の根底に共通する遺伝的基盤があることも示されたとチームは話しています。
つまり、右翼権威主義の傾向が強い人は、遺伝的に社会的支配志向性の傾向も強くなる可能性があるようです。
もちろん、すべての政治的考えや立場が遺伝子で決まるわけではありませんが、少なくとも権威や集団格差に対する態度には、後天的な環境因子よりも生まれつきの気質が強く影響する可能性があり、政治スタンスを心理学方面から説明する理論に疑問を投げかけています。
チームは今回の研究について、ノルウェーの中年成人にデータを限定している点で限界があることを認め、さまざまな文化的集団や年齢層を対象に調査を拡大する必要があると述べています。