細菌はどんなときに血中に侵入するのか?
細菌は自然環境や生き物の体内を含め、ありとあらゆる場所に存在しています。
当然ながら私たちヒトの体内にも無数の細菌が常在していますが、健康なときは免疫系によって制御されており、血中に入るようなことはありません。
しかし病気などが原因で、体内に損傷が起きるとそこから有害な細菌が血中に侵入し、重篤な感染症を引き起こすことがあります。
特に研究チームが言及するのは「炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease:IBD)」です。
IBDは大腸で炎症が起きることにより、大腸内の粘膜が傷つき、腹痛や下痢、血便を起こします。
ただIBDでも大抵はこの程度の症状で済みますが、クローン病や潰瘍性大腸炎のように重症度の高いものになると、腸内出血を起こすリスクが極めて高くなり、その傷口から細菌が血中に感染することがあるのです。
こうして血流感染症を起こすと細菌が血中で増殖し、敗血症(=急速な組織の損傷または多臓器不全)を招いて、最悪の場合は死にいたる恐れもあります。
下図に示すように、IBD患者のうちで腸内出血を起こす割合は10〜20%で、そこから血流感染症となって死にいたる割合は2%です。
その一方で、研究者たちは「腸内に傷口ができたとしても、どうして細菌がこれほど器用に腸内から血中に侵入して感染症を引き起こすのかよくわかっていなかった」と話します。
この疑問をもとに研究チームは、最も一般的に血流感染症を引き起こすことが知られている細菌を対象に、血液に対してどのような反応をするかを実験で調べてみました。