オシッコやウンチが挨拶がわりになる⁈
ゾウはとても知能の高い動物であり、人の言葉を理解したり、絵を描いたり、簡単な算数ができることがわかっています。
その一方で、ゾウが仲間とどんな挨拶を交わすのかはこれまであまり調べられていませんでした。
そこでウィーン大学の研究チームは2021年11〜12月にかけて、アフリカ南部・ジンバブエの自然保護区で、9頭のアフリカゾウ(学名:Loxodonta africana)を対象にどんな挨拶を交わすかを調査。
調査期間の終わりまでに、89種類の挨拶を含む延べ1282回の挨拶行動が記録されました。
その多くは耳をパタパタさせたり、鼻を左右に揺らしたり、あるいはお尻を相手の顔に向けて尻尾を振ったり、尻尾を水平にピント立てて鼻先で相手にタッチするというものがほとんどでした。
ところがこれと別に、チームは予想外な驚きの発見をします。
なんとゾウたちは挨拶のために互いに接近すると、勢いよく排尿したり、排泄したり、大汗をかく行動を取っていたのです。
しかもこの行動はごくたまにではなく、挨拶行動の実に71%で確認されました。
これはゾウにとってオシッコやウンチを出すことが挨拶をする上では至って常識であることを指し示しています。
こちらがその実際の映像です。(※ 音声はありません)
なぜゾウたちが挨拶に排尿や排泄を採用しているのかは、まだよくわかっていません。
しかし研究者たちによると「ゾウは視覚にあまり依存しない動物であり、その代わりに聴覚と嗅覚に非常に頼っている」といいます。
つまり、オシッコやウンチの匂いによって相手を識別し、コミュニケーションを図っていると考えられるのです。
もしかしたら、お互いのオシッコやウンチを確認することで「お、調子良さそうだな。ほれ俺も元気だぞ」と伝え合っているのかもしれません。
(※ こちらは音声付きで、途中にゾウの鳴き声が入っています。ご注意ください)
その一方で、チームはゾウの挨拶における決まったルールのようなものも見つけました。
それは挨拶の際に相手がこちらの存在に気づいていると、耳をパタパタさせる、鼻先や尻尾を左右に振るという行動が優先されて、相手がこちらの存在に気づいていない場合は、甲高い鳴き声やゴロゴロとした唸り声をあげたり、鼻先で相手を触る行動が優先されていたのです。
これは時と場合によってゾウが挨拶の仕方を柔軟に変えていることを指し示しています。
こちらはゾウがゴロゴロと唸りながら挨拶する際の様子です。
しかしいずれの場合にせよ、お互いが接近した後は結局、オシッコやウンチの見せ合いをしていました。
この方法は人間社会で採用できる挨拶ではとてもありませんが、ゾウたちにとってはとても大切なコミュニケーションのようです。