誤情報の拡散はごく少数の人間がコアになっている
私たちが日々利用しているインターネットやソーシャルメディアは、正しい情報と誤った情報が入り混じる場所です。
最近の研究によると、特定のユーザー、いわゆる「スーパースプレッダー」が誤情報の拡散に大きな役割を果たしていることがわかっています。
スーパースプレッダーとは、信頼性の低い情報を大量に広めるユーザーのことです。
このようなユーザーの存在により、私たちはどれを信じればよいのか判断が難しくなってしまいます。
そこで今回、インディアナ大学の研究者たちは、2020年1月から10月の間にX(旧Twitter)に投稿された「信頼性の低い」メッセージを分析しました。
その結果、誤情報の拡散には特定のユーザーが大きな影響を与えていることが明らかになりました。
具体的には、調査サンプルの中でわずか10人のユーザー(全体の0.003%)が、信頼性の低いコンテンツの34%以上を発信しており、全体の0.25%にあたる1,000人のユーザーが、信頼性の低いコンテンツの70%以上を広めていました。
これは、スーパースプレッダーと呼ばれる特定のユーザーが誤情報の拡散において中心的な役割を果たしていることを示しています。
さらに、研究で特定されたスーパースプレッダーを詳しく調べると、半数以上が政治的な会話に深く関わっていることが判明しました。
特に興味深いのは、その大多数が保守派であったことです。
また、フォロワー数が1万人未満のナノインフルエンサー、有名なテレビ番組の司会者、逆張りの科学者、反ワクチン派のアカウントもかなりの割合で誤情報の発信に関与していることがわかりました。
この研究は、SNSにおける誤情報の拡散を抑えるためには、スーパースプレッダーを特定し、その活動を制限することが効果的であることを示唆しています。
SNSから誤情報を完全に排除することは難しいとされていますが、少数の影響力の大きなユーザーを排除するだけで状況は大きく改善される可能性があります。
しかし、恣意的にアカウントを停止することは、言論の自由の価値観と矛盾する可能性があります。
特に、情報検閲が厳しい国々では「誤情報の拡散防止」を口実に、多くのアカウントや投稿が削除されてきた歴史があります。
このため、特定の誤情報を意図的に拡散しているユーザーと、単純に間違えてしまったユーザーを区別することが重要です。
インディアナ大学の研究者たちは、SNSをより安全な環境にするためには、ネットワーク構造やユーザーの行動を深く理解することが必要であると結論づけています。