元は健康的な食材でも超加工食品は心血管疾患のリスクを高める
今回の研究では、イギリスの長期大規模バイオバンク研究である「UKバイオバンク」のデータによって、約10年間追跡された11万8000件の成人のデータが使用されました。
その中には、参加者の食事、習慣、環境、健康および医療上のデータが含まれていました。
そしてこれらのデータを、加工食品の分類を示す「ノバ分類法」と共に、どのような関連性があるのか分析しました。
ちなみに、特に焦点が当てられたのは、「植物由来の超加工食品」であり、以下はその例です。
- 工場で作られたパン、ケーキ、クラッカー、フライドポテト、ポテトチップス。
- チョコレート菓子、シリアルバー、冷凍ピザ、マーガリン。
- 朝食用シリアル、ソフトドリンク、フルーツジュース、低カロリードリンク。
- ソース、ドレッシング、トマトケチャップ、サラダドレッシング、パスタソース。
- 肉の代替品(ベジタリアンハンバーグや豆腐ミンチなど)。
そして分析の結果、植物由来の超加工食品でも、多く摂取する人ほど心臓病で死亡する確率が高くなると分かりました。
例えば、植物由来の超加工食品から摂取するカロリーが10%増加するごとに、心血管疾患を発症する確率が5%上昇しました。
その中でも特に、冠状動脈性心疾患(心筋に血液を供給する冠状動脈の血流が悪くなる病気)を発症する確率は6%も上昇していました。
一方で、過度に加工されていない植物由来の食品の摂取量が10%増加するごとに、冠状動脈性心疾患の発症リスクが8%低下し、これに由来する死亡リスクが20%も低下したと報告されています。
また「植物由来の超加工食品」を「植物由来の過度に加工されていない食品」に置き換えると、健康が改善され、心血管疾患の発症リスクが7%低下し、これに由来する死亡リスクが15%低下しました。
植物由来の超加工食品の例を見ると、それらが健康に悪いことは明らかなので、この結果は納得のいくものでしょう。
ラウバー氏も、「植物由来であるにもかかわらず、これらの食品はその成分や加工方法により、健康を悪化させる恐れがある」と結論付けています。
やはり、私たちの体に「植物由来だから」という強引な言い訳は通用しないようです。
とはいえ今回の研究やプレスリリースでは、「植物由来の超加工食品」すべてをまとめて分析・言及しており、これが不正確さに繋がっていると指摘する専門家は少なくありません。
ポテトチップスも豆腐ミンチも同じ「植物由来の超加工食品」として扱われているのです。
そのため、植物由来の超加工食品の中にも、健康に害を与えないものが含まれている可能性は高いと言えます。
特に、フルーツジュースや朝食用シリアル、トマトのパスタソース、ベジタリアンハンバーグなどは、健康的なイメージを抱きやすい食品です。
今回の研究からは、これら個々の食品が実際にはどのような影響を及ぼすのかは示されていません。
ただ、私たちはあまりに加工食品に慣れすぎてしまっていて、加工の度合いによって元の食材から失われる栄養素に無頓着になりがちです。
例えば濃縮還元ジュースでは、そもそもフルーツジュースに期待されているビタミンが破壊されてしまいます。そのためこれらに含まれるビタミンは後から添加されたもので、結局は加工食ということになります。
(※濃縮還元ジュースは、壊血病の原因が果物の不足と特定した医師ジェームズ・リンドが開発し船乗りに持たせたのが始まりですが、最も重要なビタミンが破壊されてしまっていたため結局効果が出なかったという逸話があります)
私たちは、きちんとした食事を取る余裕がないとき、コンビニなどで売られている野菜や穀物が入っているという商品を健康的なのかなと選択しがちですが、たまには本物の野菜や果物を買って直接食べる習慣を付けないと、大きく健康を損なう原因になってしまうかもしれません。