骨壷にワインを入れた理由とは?
研究者らは「遺骨がワインに浸っていたのは偶然でもなんでもなく、れっきとした理由がある」と話します。
古代ローマ社会においてワインは主に男性の飲み物であり、女性は長い間ワインを飲むことを禁じられていました。
これは家庭内の道徳や品位を守るためとされ、女性がワインを飲むことは不適切であると考えられていたからだといいます。
実際に紀元前2世紀の法律では、妻がワインを飲むのを見つけた場合、離婚の正当な理由になることもあったのです。
(※ この制約は時代が進むにつれて緩和され、特に上流階級の女性や祭事などの特別な場では、女性も広くワインを飲むようになります)
こうした背景から古代ローマ社会では、ワインが埋葬時に遺骨の性別を区分するための副葬品となっていきました。
例えば、遺骨をそのまま骨壷に入れるだけだと男女の区別がつきませんが、今回のように遺骨をワインと一緒に納めることで、男性の骨壷と判断できたのです。
またこの慣習は「故人が死後の世界でもワインを楽しめるように」との意味合いも込められていたと指摘されています。
これと対照的に、女性の遺骨がワインに浸されることはありませんでした。
今回の遺跡から見つかった骨壷の中にも女性の骨はありましたが、そこには一滴のワインも入っておらず、代わりに琥珀色の宝石が3個、シソ科の植物であるパチョリの香りのする香水の瓶、絹織物の残骸が入っていたという。
こうした理由から、男性の遺骨はワインに浸された状態で埋葬されたようです。