グリフォンは恐竜化石を元に描かれていなかった!?
ウィットン氏ら研究チームは、歴史上の化石記録、プロトケラトプスの化石の分布と性質、グリフォンとプロトケラトプスを結び付ける資料を再分析しました。
また歴史家や考古学者から、化石にもとづかないグリフォンの起源の見解を入手し、検討しました。
その結果、「グリフォンは恐竜化石を元に描かれた」説には多くの問題点があり、根拠が薄いことを発見しました。
まず、プロトケラトプスの化石は、金鉱山の近くで見つかっていないことが挙げられます。
これは、グリフォンが金を守る存在として描かれることと矛盾します。
また、恐竜化石が発見されたタイミングと、過去のグリフォンの絵が描かれたタイミングが異なることも挙げられます。
例えば、グリフォン神話は地中海地方に数多く存在しており、少なくとも紀元前12世紀の花瓶にはグリフォンが描かれています。
しかし、恐竜のニュースがその地域に届くのは、何百年も後のことです。
恐竜化石の情報を元にグリフォンを描くことなどできなかったはずなのです。
さらに、プロトケラトプスとグリフォンの類似点が強調されすぎているとの批判もあります。
確かに、プロトケラトプスとグリフォンの骨格は、「クチバシ」と「四肢がある」という点で似ています。
しかし、「それだけ」です。
この僅かな類似点から、古代人が「化石を発見した後、グリフォンをイメージした」というのはかなり無理のある話なのです。
そのため研究チームは、「グリフォンの起源は、単に神聖視されていた実在する動物の特徴を組み合わせたキメラであり、恐竜の化石を元にその姿を復元しようとして生まれたわけではない」と考えています。
ワシやライオンといった動物が、様々な地域で神聖視されていた事は確かであり、それらが融合してグリフォンの姿が誕生したという考え方の方が、恐竜の化石が元ネタというより説得力があるというわけです。
今回の結論は、グリフォンの起源だけでなく、他の神話上の生物の起源を探る上でも役立つことでしょう。
現実には存在しない幻想生物の姿はどこから来たものなのか? ここには古代のロマンが詰まっています。
恐竜の存在を知らなかった時代の人々が、異形の巨大な骨を解釈するために生まれたのか? それとも何かを見間違えたのか?
恐竜の化石が古代の神話に影響を与えたという考え方は、想像しやすくまた面白い考察ではありますが、詳しく調べてみると証拠に乏しく、慎重な検討が求められる問題だとわかります。
こうした検証のプロセスが、神話や古代の歴史を一層正しく理解するためには大切なのです。