増える「自称うつ病」
今考えると驚くべきことですが、過去には、「精神疾患は甘えだ」という考えを持つ人が少なくありませんでした。
そのため当事者は、精神疾患を恥ずかしいものと考えてしまい、なかなか医師に相談することができませんでした。
自分が精神疾患を患っていること自体も、公にすることが難しい状況があったのです。
そうした時代を考えると、現代では「通院のしやすさ」「相談のしやすさ」といった点で、かなり前進していると言えます。
社会全体でも、メンタルヘルスに対する意識は高まっており、ソーシャルメディアを中心にこの問題が議論され社会的に認知されるようになりました。
しかし、最近では、逆に「行き過ぎた状況」に発展しています。
ソーシャルメディアやSNSでは、医師の診断を受けていないにもかかわらず、「自分はうつ病だ」などと自称する人がかなり増えたのです。
「自分は精神疾患かもしれない」と誰かに伝えられること自体は良いことですが、こうした人々の多くは、自分で判断するだけに留まり、きちんとした医師の診察を受けようとしません。
では、どうして自称うつ病の人がここまでたくさん増えてしまったのでしょうか。
テス氏ら研究チームは、この疑問に答えるため、1つの調査を実施しました。
アメリカ人の成人474名を対象に、「精神疾患を患っていると思うか」また「医療機関や専門家からの診断を受けたことがあるか」など、いくつかの点を尋ねました。