偏見がない人は、時間は掛かるが最善の決断を下し易い
今回開発された数学モデルのエージェントでは、判断を下す際どのように偏見が反映されていたのでしょうか。
研究チームは、「水の入ったバケツをイメージすると分かりやすい」と述べています。
私たちが何かを検討する時には、まず情報を集め、それが一定の水準まで集まった時に決断が下されます。
情報を水、判断の水準をバケツの容量として考えた場合、最初からバケツの中程まで水が満たされていれば、その分決断は早く下すことができるはずです。
では、この事前にバケツに入ってる、判断に利用可能な情報とはなんでしょうか?
それが結局のところは、偏見や好みということになるのです。
当然、偏見が大きいエージェントは少ない情報からでも素早く決断を下しますが、その決断は最初から入っていた情報(偏見)に大きく影響されることになります。
対照的に、わずかな偏見からスタートしたエージェントは、利用可能なすべての情報を検討し、それらの情報から最善の決定を下そうとするため、決断までには時間がかかります。
そして決断が最も遅いエージェントは、完全に公平なエージェントと似ており、どちらもゼロから始めたかのようにじっくりと情報を集め、検討していました。
確かに判断の早い人は、よく直感や経験上こちらがいいと言うような判断理由を述べることがあります。
これは確かに素早い判断に有効な場合もあるでしょうが、もしこれが人事などの場合、直感でこいつは使えない、こういう経歴の人は経験上使えない、と言っているようなものなので、確かに偏見で物事を判断していると言えるかもしれません。
そう考えると、今回の数学モデルが示すように、偏見を持たず情報がゼロの状態から公平にジャッジするほうが、時間は罹ったとしても最もメリットのある決定を下せる可能性は高いでしょう。
もちろん、今回の研究は数学モデルを利用したシミュレーションであるため、モデルで考慮されていない要因があるのも事実です。
そのときの心理状態や、上司の意見や嫌いな人の意見の影響など、現実では様々な要因が複雑に関わって物事の決定は下されます。
そのためこの研究が決断の早さに対して完全な説明ができていないのは確かですが、それでも、単に決断が遅いことをデメリットと見るべきでないことは十分に分かります。
「レストランで何を食べるか」くらいであれば、好みや偏見に影響された素早い決断で構わないでしょう。
しかし、「どの大学にいくのか」「どの職場に就くのか」「誰を採用するか」という人生に関わる大きな決定の際には、偏見をなるべく取り除いた方が良い結果を導けるはずです。
普段、「優柔不断で判断が遅い」と言われるあなたは、もしかしたら、公平な目で最善の決定を下しているのかもしれません。
自分の事を優柔不断かつ偏見が少ないと思っていたので
この記事には納得