心理的な「幸せの鍵」はどこにあるのか?
研究チームは以前から「なぜ一部の人は他の人よりも常に幸福度が高いのか?」という疑問に取り組んできました。
私たちが日々感じる幸福度は、心身の健康状態から社会的な出来事(「会社で昇進した」「プロポーズに成功した」「子供が生まれた」etc)に至るまで、様々な要因に影響されています。
その中でチームは「幸福度の高さは人生の”楽しい時”と”つまらない時”の両方にどう向き合っているか」が深く関わっていると思うようになりました。
「人生楽ありゃ苦もあるさ」と歌われるように、私たちの生活は楽しい出来事ばかりではありません。
日々の何気ない生活でも幸せに過ごしている人は、楽しい時だけでなく、つまらない時との接し方にも何らかの特徴があると考えられます。
そこでチームはこれまでの心理研究を踏まえて、次の2つの仮説を立ててみました。
常に幸福度が高い人は
(1)日常の楽しい活動において「調和の取れた情熱」を高いレベルで経験している
(2)日常のつまらない活動に対しては「自主性・自発性」を持って取り組むことができる
「調和の取れた情熱」とは?
まず1つ目ですが、心理学分野において「情熱」は次の2つに分けて考えられます。
一方が「強迫的な情熱(Obsessive passion)」で、もう一方が「調和の取れた情熱(Harmonious passion)」です。
「強迫的な情熱」とは、活動に対して向けられる情熱が過剰であり、もはや自分ではコントロールできず、意志と関係なく没頭してしまうような無理のある情熱を指します。
こうした情熱はむしろストレスや不安すらも引き起こしてしまい、仕事に支障が出て、家族や友人関係にも害悪が出る恐れがあります。
これと反対に「調和の取れた情熱」とは、活動に対して向けられる情熱がバランスよく人生全体と調和しているような状態を指します。
要は、自分が取り組む活動に十分な情熱を捧げている一方で、その情熱をちゃんとコントロールできている感覚があり、他の仕事や家族との時間にも悪影響を及ぼさないような情熱です。
どちらの情熱を持つかで幸福感は大きく左右されると考えられています。
つまらない時こそ「自己調節」の力が大事
2つ目の「自主性・自発性」は、心理学分野における「自己調節(Self-regulation)」という考えに含まれます。
自己調節とは、自分自身の行動や感情、思考をコントロールし、目的や目標に向かって自律的に行動するための能力を指します。
この能力は楽しい活動時にも役立ちますが、特につまらない活動や気乗りしない雑務に取り組む上でとても大切な能力です。
例えば、勉強や掃除、雑用など、やりたくもないし、情熱も湧かない作業を「学校や会社の決まりだから」と強制的・義務的にこなすのでは、いつまでもダラダラと続けてしまいますよね。
しかし、こうした気乗りしない活動を「自分の成長に繋がるから」とか「今終わらせておいたら後が楽になるから」とポジティブな理由をつけて、自主的・自発的に取り組めるのが「自己調節」の力です。
研究チームは、この「情熱」と「自己調節」に関する2つの仮説が正しいかどうかを検証しました。