「生きるために食べること」と「楽しむために食べること」
私たちは、空腹になると何かを食べたくなります。
この欲求は、人間や動物が生きていくために欠かせないものです。
一方で、私たちが「食べたい」と感じるのは、それら必要に迫られた時だけではありません。
例えば、ケーキやチョコレートなどの「スイーツ・デザート類」、ポップコーンやポテトチップスなどの「スナック類」、ハンバーガーやフライドポテト、ピザなどの「ファーストフード・ジャンクフード」を食べる時です。
それら高カロリー・高糖質・高脂肪の食品は、単に空腹だから食べるというよりも、「楽しむ」ために食べられています。
この欲求は私たちの心をリラックスさせたり、ストレス発散に役立ったりと、精神的な健康面でいくらか効果的です。
ほとんどの人は、両方の欲求を経験しますが、バランスが崩れることも少なくありません。
このバランスが崩れると、体が栄養を必要としているのに食欲が湧かず、やせ細ってしまったり、快楽を求め続けて肥満になってしまいます。
特に肥満は、世界中の人々が抱える健康上の問題です。
「なぜ私は、高カロリーなものばかり食べてしまうのだろう」と悩んでいる人も多いでしょう。
しかし、摂食行動を制御する神経メカニズムに関しては、ほとんど理解されていません。
そこで今回、シュウ氏ら研究チームは、マウスのブローカ対角帯(DBB:Diagonal band of Broca)のニューロンに注目しました。
DBBは脳の下部に位置しており、これらのニューロンは、以前の研究から摂食行動との関連が認められています。
そして今回の研究では、オスのマウスのDBBのニューロンに光を当てて制御(活性化または非活性化)し、マウスの摂食行動にどのような影響があるか観察しました。
さらに空腹時や高脂肪・高糖質食品を与えている時に、DBBのニューロンがどのように活動しているかリアルタイムで追跡しました。