難解な芸術鑑賞が「楽しくなくても」創造性がアップ
今回の研究では、約500人の参加者が無作為に2つのグループに分けられました。
一方のグループは、解釈が難しく、視覚的にも独特な「芸術的短編映画」を視聴します。
もう一方は、動物の面白映像や家庭内のハプニングなど、誰でも楽しめる娯楽的な動画を視聴しました。
重要なのは、この2つの動画がどちらも「視聴体験」としては成立している点です。
つまり単純な「何も見ない場合」との比較ではなく、娯楽性はあるが思考をあまり刺激しない映像と、解釈を要求する芸術作品を比較しているのです。
視聴後、参加者は創造性を測る2種類の課題に取り組みました。
1つ目は「カテゴリー判断課題」と呼ばれるものです。
参加者は、提示されたさまざまな対象が、特定のカテゴリーにどれくらい当てはまるかを評価するよう求められました。
例えば、「車」が「乗り物」というカテゴリーにどれほど当てはまるかを評価する、といった具合です。
これは簡単に思えますが、「ラクダ」や「足」はどうでしょうか。
このとき、既存のカテゴリーにとらわれず柔軟に判断できる人ほど、概念の境界を広げる能力(=概念的拡張)が高いとされます。
これは新しい発想を生み出すための重要な基盤です。
2つ目は、より直接的に創造性を測る課題です。
「切手(stamp)」「手紙(letter)」「送る(send)」といった単語をすべて含めて短い物語を作るよう求められます。
単純に出来事を説明するだけの文章(「友人に手紙を書き、切手を貼って郵便局で送った」)もあれば、比喩や意外な展開を盛り込んだ独創的な物語(「彼女の言葉は私の心に刻印(stamp)を残した」)も生まれます。
結果は明確でした。
芸術作品を見たグループほど、どちらの課題でも一貫して高い創造性を示したのです。
さらに興味深いのは、芸術映画を見た参加者は、必ずしもその体験を「楽しい」と感じていなかった点です。
むしろ、気分がやや悪くなったと報告する傾向すらありました。
それにもかかわらず創造性は高まっていたことから、創造性の向上は「楽しさ」や「ポジティブな気分」によるものではないことが示されたのです。




























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