食べられても諦めないウナギ:「弱肉強食」の理を欺く進化
今回は2021年に発表された研究の続報的なものになります。
そのためまずは2021年の研究を振り返りたいと思います。
以下の4コマは2021年に行われた研究について4コマ漫画で説明したものになります。
4コマという性質上、詳細な点までは伝えきれませんが、研究の面白さを知っていただければ幸いです。
新たな研究はこれに加え、食べられてしまったウナギが捕食者の体内でどのように動いているかがX線を使って解明されました。
一寸法師は針で鬼の胃をつついて吐き出されましたが、ウナギたちはもっとスマートな方法で脱出しているようです。
ことの始まりは2021年に発表された研究に遡ります。
長崎大学の研究者たちは二ホンウナギの稚魚が捕食者に襲われたときにどのような回避行動を行うかを調べていました。
動物たちの回避行動は長い進化の過程を経ることで、一定のパターンを先天的に備えるものがいるからです。
実際これまでの研究により、一部のウナギでは危機的な状況になると、後方に向けて急発進する「バック」能力が知られています。
研究者たちは二ホンウナギの回避能力を調べるため、水槽の中にウナギの稚魚と捕食者のドンコを入れ、記録を行っていました。
しかし実験を開始してすぐに、研究者の1人が奇妙な現象に気が付きました。
ある水槽ではウナギの稚魚がドンコに食べられてしまったにもかかわらず、時間をおいてみてみると、ウナギの稚魚が平然と泳いでいたのです。
2021年に発表された研究ではこの謎現象について初めて調べられ、その結果、食べられてしまったはずのウナギの稚魚が捕食者のエラから「バック」で脱出していることが明らかになりました。
また成功率も驚異的であり、研究では一度食べられてしまった58匹のウナギのうち実に28匹もが脱出に成功し、そのうち26匹が「無傷」だったことが判明。
また脱出にかかった時間を測定したところ47±36秒という極めて短時間であることが示されました。
胃の中でランダムに動き回っているだけでは、この成功率と速度は得られません。
そのため研究者たちは、二ホンウナギはこの特殊な脱出法を積極的に狙えるように行動様式を進化させた可能性があると結論しました。
ですがこの時点では、捕食者の体内でウナギたちがどのように動いて脱出にこぎ着けたかは謎のままでした。
そこで今回、長崎大学の研究者たちは、ウナギの稚魚に造影剤を投与することで、捕食者の体内でどのように動いていたかをX線撮影で確かめることにしました。