自閉症の犬には「LSD」を投与するとシンクロ率がUP!
自閉症(自閉スペクトラム症:Autism Spectrum Disorder, ASD)は、対人コミュニケーションに強い抵抗感を示す発達障害の一つです。
子供の約20〜50人に1人が自閉症を持つとされ、名前を呼んでも振り向かない、特定の物事に強いこだわりがある、触られるのを嫌がる、視線が合わない、表情が乏しいなどの特徴を示します。
自閉症は人に特有のものと思われがちですが、実は犬の世界にも自閉症はあるのです。
特にこれまでの研究では、脳のニューロン間の結合を維持するタンパク質を作り出す「SHANK3遺伝子」に異常があると、犬が自閉症を示すことがわかっています。
チームは今回、遺伝子編集ツールを用いてSHANK3遺伝子に変異を起こし、自閉症を持った犬を作成しました。
この犬は人との相互作用を経験しても、脳波がまったくシンクロしないことが確かめられています。
先の実験と同様、撫でて見つめ合う交流を5日間つづけても、脳波のシンクロ率は低いままでした。
そこでチームは、自閉症の犬に合成薬物として有名な「LSD(リゼルグ酸ジエチルアミド)」を投与してみることにしました。
LSDは以前、マウスに投与することで社会性を高められることがわかっています。
これを受けて、自閉症の犬にLSDを適量投与した結果、24時間後から人との脳波活動のシンクロ率が徐々に高まり始めたことが確認されたのです。
この改善は1回の投与で、実験5日目まで持続していました。
LSDが脳波のシンクロ率を高めたメカニズムはまだ不明ですが、この結果はLSDが自閉症の治療薬として有効であることを示唆するものです。
ただLSDはその中毒性や幻覚作用の高さから違法ドラッグとして認定されており、医療目的で使用することは認められていません。
しかし現在、LSDから毒性や幻覚作用を引き起こす化合物を除去し、向精神作用だけを残した試験薬の開発が世界的に進められています。
安全に服用できるLSDが開発されれば、自閉症を治療する新たな方法となるかもしれません。
チームも次のステップとして、自閉症に有効で安全なLSDの開発が可能かどうかを研究する予定です。
LSDといえばジョン・C・リリーのアイソレーションタンクでの研究が有名ですね。