フタを閉めて水を流しても壁や便座裏にはウイルスが付着している
研究チームは、フタの開閉によってエアロゾル発生にどのような違いが生じるのか、粒径1 μmのエアロゾルの空間分布の測定結果を図で示しました。
当然ながら、フタを閉めることで上方へのエアロゾル発生・拡散は無くなります。
しかし、使用者側に15cmほどの距離までエアロゾルが噴出することが分かりました。
これは、フタと便器の隙間から水流によって便器内の空気が押し出されることによって生じると考えられます。
この結果からすると、フタを閉めて水を流す時には、少なくとも便器から15cm以上離れるべきだと分かります。
そうしなければ、自分の足が、汚水やウイルスを含んだエアロゾルを浴びてしまうことになるでしょう。
また別の実験では模擬ウイルス試料を使用し、フタを閉めた状態で水を流した時に、便器や個室内に付着するウイルスを定量化しました。
その結果、便器内に排出されたウイルスは、便器の外にも排出され、様々な場所に付着すると分かりました。
例えば個室内の壁には33%ものウイルスが付着しており、不用意に壁を触るべきではありません。
壁際にある「小物を置くための棚」には、スマホなどを置いてしまいがちですが、そうすることでウイルスがいくらか付着する恐れがあります。
トイレの後に手を洗って除菌したとしても、そのままスマホを触りながら食事に戻ったりするなら、ウイルスを体内に取り入れてしまう危険があるのです。
そして、コロナウイルスやノロウイルスに感染した人がトイレを使用した後には、付着率の高い「フタの裏」や「便座裏面」などもしっかりと除菌することで、感染リスクを低減できると分かります。
ちなみに男性であれば、アレが便器前方(図の③や④周辺)に接触するというアクシデントはよく経験していると思いますが、これも付着ウイルスの観点で考えると危険だと分かります。
日本のトイレは世界的に見て非常に清潔ではあるものの、こうした研究結果を活用することで、一層清潔で、感染リスクに配慮したトイレへと進化させられるかもしれません。
個人としては、トイレの水を流す際、フタを閉めて少し離れることを徹底し、その上で、ウイルスが付着しやすい場所の掃除を入念に行うことで、感染リスクを低減していけるでしょう。