ランニングマシン実験より、吸血コウモリの血液の代謝方法が明らかに
実験では、吸血コウモリたちをいくつかのグループに分け、それぞれに専用のウシの血を飲ませました。
あるグループでは、必須アミノ酸である「ロイシン」を高濃度で混ぜたウシの血を与えました
別のグループでは、非必須アミノ酸である「グリシン」を高濃度で混ぜたウシの血を与えました。
別のグループでは、そのままのウシの血を与えています。
その後、吸血コウモリたちを3つの強度(分速10m、分速20m、分速30m)で走らせ、酸素摂取量と二酸化炭素排出量などが計測されました。
吐き出された二酸化炭素を分析することで、アミノ酸がどのように代謝されたかを知ることができるからです。
実験において、コウモリは最初歩いていましたが、徐々に速度が上がっていくにつれ、小走りし、最後には跳ね回るように走りました。
ほとんどのコウモリは、90分間のテスト中、ずっと走り続けることさえできました。
吸血コウモリが走り続ける姿はなんともユニークで面白いですが、実験とはいえ、長時間走らされるコウモリからするとたまったものではなかったでしょう。
そして実験の結果、ランニングマシン上のコウモリの息からは、アミノ酸の代謝による二酸化炭素の生成がほぼ即座に検出されました。
さらにグリシンとロイシンの分解が、コウモリの走行中の総エネルギー生産量の60%を占めていることも分かりました。
これは、吸血コウモリがアミノ酸をほぼ瞬時にエネルギーに変換できることを示しています。
蚊などの昆虫が血液中のアミノ酸を代謝するのに長い時間を要することを考えると、これは驚きの結果だと言えます。
また、吸血コウモリでは、必須アミノ酸(ロイシン)も非必須アミノ酸(グリシン)も、効率的にエネルギーに代謝できることが分かりました。
吸血コウモリの小さな体は、与えられたアミノ酸が何であれ、それを最大限活用できるのです。
研究に関わっていないある科学者は、10分未満でアミノ酸を代謝する吸血コウモリの能力に関して、「哺乳類では前例のない」発見だと述べています。
この点に関して、研究チームは、「吸血コウモリは、摂取した大量の燃料(血液から得られるタンパク質やアミノ酸)を効率的に利用するために、このメカニズムを発達させた」と考えています。
ただし吸血コウモリは、血液から得られるタンパク質を効率的にエネルギーとして利用することに特化したことで、脂肪の蓄積や貯蔵能力が低下していおり、空腹状態に長く耐えられないという欠点があります。
それゆえ飢餓に弱く、血を吸えない日が続くと、すぐに命に危険が生じてしまいます。
この欠点を補うため、群れで生活する吸血コウモリたちは、血をたくさん吸った後、お腹を空かせた仲間に対して、血を吐き戻して与えることもあるのです。
吸血コウモリが飛べなくなるまで血をたくさん吸うことには、彼らなりの大切な理由があったのです。
この時、吸血コウモリが歩いたり走ったりできる能力が役立っています。
今回、吸血コウモリをランニングマシンで走らせるという興味深い実験から、彼らの特殊な代謝メカニズムが明らかになりました。
そしてその代謝方法は、「吸血コウモリの食生活」や「走ることが得意であること」と密接にかかわっていたのです。