バリエーションをつけなくても効果が得られる
筋トレの効果に影響を与える要因には、扱う重量(強度)や限界まで行うかどうかなど、様々なものがあります。
その中でも、今回の研究は種目のバリエーションに注目したものです。
ジムでの筋トレは、バーベルやダンベルを使ったフリーウエイト種目と、専用の機械を使ったマシン種目が主な方法です。
この際、例えば、もも裏(ハムストリングス)をターゲットにしたレッグカールというマシンにも、うつ伏せで行うプローンレッグカールや座って行うシーテッドレッグカールなど、いくつかの種類があります。
同じ筋肉を鍛えていても、こうした細かい種目の違いは姿勢や関節の位置に影響し、刺激がかかる部位が微妙に異なります。
そのため、様々な種目を取り入れることで筋肉の成長にプラスになるのではないかと考えられますが、実際にはどうなのでしょうか?
この疑問に答えるため、シリノ教授らは70名の若年女性を一定群と多様群の2つのグループに分け、下半身の筋トレを行わせました。
一定群は、月・水・金曜日に45度レッグプレス(主に大腿四頭筋や大殿筋を鍛える)とステッィフレッグデッドリフト(主に大殿筋やハムストリングスを鍛える)を続けました。
一方、多様群は、
月曜日に45度レッグプレスとステッィフレッグデッドリフト、
水曜日にハックスクワットとプローンレッグカール、
金曜日にスミスマシンスクワットとシーテッドレッグカール、
と、曜日ごとに異なる2種目を実施しました。
トレーニング実験は10週間、週3回行われ、1回のトレーニングで各種目を2セット、10~15回の反復回数で限界まで行いました。
結果を見てみると、超音波検査で測定された筋肉の厚さは、太ももの前面、側面、後面のそれぞれについて、股関節に近い位置と遠い位置で細かく評価されましたが、グループ間に有意差はなく、どちらのグループも成長しました。
また、下半身の筋力も同程度に成長しました。
この結果に基づき、シリノ教授らは「実用的な観点から、筋トレやコンディショニングの専門家は、太ももの筋肉を大きくしたり強くしたりするために、バリエーションのある方法とない方法の両方を取り入れることができる」とまとめています。
つまり、バリエーションを持たせなくても、同じ種目を続けることで、その部位はしっかり成長できるのです。
では、本当に日々の筋トレを続ける上で、同じ種目をやり続けても良いのでしょうか?
次のページでは、種目を変えることの意外な効果について考えていきます。