種目を変えると内発的動機が高まる?
2019年、スペイン・マドリード自治大学(Autonomous University of Madrid)に所属するフェルナンデス教授らの研究グループは、2年以上筋トレを続けている男性を対象としたトレーニング実験の結果を発表しました。
この実験では、2つのグループともに週4回、8週間のトレーニングを行いましたが、片方のグループは同じ種目(計12種目)を続ける一方、もう片方のグループは非常にユニークな方法で種目を選びました。
その方法とは、研究用に開発されたアプリを使って、80種目からランダムに選ぶというものでした。 ただし、上半身では押す種目と引く種目、下半身では前側を鍛える種目と後側を鍛える種目が均等になるよう配慮されています。
つまり、大まかに言うと、2つのグループの鍛えた部位は同じでしたが、片方のグループでは同じ種目を繰り返し行うのに対し、もう片方のグループでは毎回ランダムに種目が決まり、バリエーションがありました。
その結果、筋肉の厚さや筋力はほぼすべての指標で両グループとも増加しましたが、群間差が認められた指標は1つもありませんでした。
この結果は、シリノ教授らの研究結果と類似しています。
さらに興味深いことに、トレーニング期間の前後に評価された内発的動機のスコアが、様々な種目を実施したグループでのみ増加していました。
内発的動機とは、好奇心や探求心、向上心など、本人の内側から湧き上がるやる気や動機(モチベーション)を指します。
内発的動機の逆の言葉として外発的動機があり、他者の評価や成果に対する報酬・懲罰など、外部要因から生じるやる気や動機を指します。
外発的動機は時に強いやる気を与えることがありますが、長期間にわたってモチベーションを維持するにはあまり向いていません。
したがって、仮に筋肉の成長に対して直接プラスに働かなかったとしても、種目にバリエーションを持たせてトレーニングを行うことで、新しい動きや器具の使い方を学ぶ機会が得られ、トレーニングへのモチベーションが高まる可能性があります。
以上を踏まえると、何をやるか迷っている筋トレ初心者の方は、種目は少なくともまずは鍛えたい部位に刺激を与え続けることで十分に成長できるでしょう。
そして、その種目に慣れて余裕が出てきたら、どんどん新しい種目にチャレンジし、バリエーションを持ちながら筋トレを続けることで、中長期的にも筋トレを楽しみながら、さらなる成長が期待できます。