投入堂はなぜ激レア建築なのか
鳥取県三朝町の投入堂がなぜ激レア建築なのか。その理由は、建てられている場所に秘密があります。
山岳信仰が元なだけあり、そこは険しい山の中。
そして修験道の聖地だけあって危険な道なき道を登らなくてはいけません。参道がまずレアなのです。
まず、独りでは見に行くことが許可されません。
思い立ったからといって、同行者がいなければ見に行くことはかないません。万が一遭難したら、ひとりでは救助を呼べないかもしれません。登山での遭難は意外なことに低山での方が多いのです。
そして、投入堂を見に行くためには入山届を出し、投入堂参拝登山料と山志納金を払う必要があります。そして輪袈裟を受け取って身に着けます。ここが第一の関所。
次の関所。そこでは履いている靴のチェックを受けます。山歩きに適した靴を履いていなかった場合、スニーカーであっても靴底がすり減っていればその場で脱ぎ、そういう参拝者のために準備されている「わらじ」に履き替えなければなりません。
わらじで登るのも修験者の気分が味わえそうではあります。
面倒な人は最初から山歩き用の靴を履いていきましょう。ちなみに30年前はこの履物チェックはありませんでした。ミニスカートにハイヒールで降りてきた女性を見たこともあります。
しかし、履物チェックが行われるようになりました。それはなぜか。
滑落の危険が伴うからです。つまり、下手をしたら遭難するからですね……。
投入堂は国宝ですが観光地ではありません。あくまでも信仰の対象なので、山岳修行のための参道に安全のための柵などありません(一部、鎖場あり)。ホームページには、当日に参拝登山が可能かどうかが掲載されるので確認しましょう。
登ってみるとわかりますが、まずまともな道がありません。
登り始めは「ホントにここ登っていくのか?」という急な、木の間を木の根っこにつかまって「かずら坂」をよじ登るスタイル。雨でも降った後なら泥んこになるでしょう。
ここで半分の人は後悔するかもしれません。これは獣道か?
でもせっかく来たのだから進みましょう。ここを登ると腹がすわるというか開き直るので、獣道ぐらいの道であれば「おお、道があるじゃないか!」という感動も味わえます。
投入堂に着く前に他のお堂を経由します。こちらも懸造で、ここへ上るには鎖場という、太い鎖につかまって登る急版がありますが、その頃には「鎖がある!親切!」という気持ちになっています。
文殊堂など高いところからの景観もよく、しばしの休憩にもぴったり。でも気を付けてくださいね。そこは高所です。落ちたら遭難です。
文殊堂を過ぎたら「日本一見に行くのが危険な国宝」と呼ばれるのがわかるはず。
再び「ここ、ホントに参道か?」という場所が現れますが、びくびくしながらも前進。多分ですが、ここなら年間何人か足を滑らせて滑落していても不思議はないという気がします。ちゃんとした靴を履いてきてよかった、もしくは、わらじの準備に心から感謝する人もいることでしょう。