ChatGPTが回答を拒否する「David Mayer」の正体とは?
ChatGPTはアメリカのテクノロジー企業が開発した生成AIの一種です。
ユーザーが投げかける様々な質問に対して何でも柔軟に回答し、外国語の翻訳から画像の生成まで、あらゆる作業をこなしてくれる優れものとして知られています。
しかしそんなChatGPTに最近、奇妙な現象が起きていると報告されました。
ユーザーがChatGPTに対して「Who is David Mayer?」と質問したところ、「エラーが起きました」とのメッセージだけを返して、それ以降は頑なに回答を拒絶したのです。
実際にそれを試したユーザーとChatGPTとのやりとりがこちら。
最初にユーザーが「David Mayer」と打つと、ChatGPTは「おかしいですね。システムに何らかの障害が起きたようです」と返答し、それに対してユーザーが「では、David Mayerと書いてみて」と尋ねると、ChatGPTは「David」まで書いて、それ以降は沈黙したのです。
では、この「David Mayer」とは何者なのでしょうか?
自らの正体を知られないために、「David Mayer」の名をネット上から削除したのでしょうか?
その謎を解明するために、まずGoogleで検索してみると、David Mayerなる名を持つ人物として特に際立った人が一人見つかります。
それが「David Mayer de Rothchild(デヴィッド・メイヤー・ド・ロスチャイルド)」氏です。
彼はその名の通り、ユダヤ人の金融財閥として有名なロスチャイルド家の御曹司であり、彼自身はイギリスの冒険家や環境保護活動家、映画プロデューサーとして活動しています。
確かに彼は影響力のある著名な人物ではありますが、公に顔と名前を公開して活動しており、ChatGPTから自分の名前を削除しようとするようなプライバシー狂ではありません。
実際に今回の件について本人に尋ねたところ、「いいえ、私自身OpenAI社とは一度も連絡を取ったことがなく、名前の削除も依頼していません」と回答しています。
またChatGPTに「Who is David Mayer de Rothchild?」と正式名称で質問してみると、いつも通り、正常に人物に関する情報提供を行いました。
そのため、ChatGPTが弾いたのは彼ではないことは確かです。
他方でもう一人、今回の騒動の原因となった可能性の高い人物がいました。
アメリカ系イギリス人の歴史家として活躍したデヴィッド・メイヤー(1928〜2023)です。
彼は英マンチェスター大学の演劇史家の名誉教授でしたが、生前に、人違い事件により誤ってアメリカのテロリストのブラックリストに載ったことで知られます。
現時点では、この誤情報をChatGPTが反映したことで「David Mayer」を検索ワードから自動的に弾いた可能性が高いようです。
結局、ネット上で騒動になった翌日、OpenAI社が問題に対処し「これは我々も意図していない不具合だった」と述べ、システムの修復を行いました。
現在ではChatGPTも「David Mayer」について正式に回答してくれる状態となっています。
ところが騒動はこれで終わりませんでした。
さらに詳しく調べてみると、David Mayer以外にもChatGPTが回答を拒絶する人名がいくつもあったのです。