キスする魚「キッシンググラミー」
このようなGIF画像を見て、少し笑ったことがあるかもしれません。
魚同士が口と口を合わせてキスをしています。
実はこれ、偶然のタイミングをとらえたものではなく、ある種の魚でたまに見られる行為です。
その魚とは、「キッシンググラミー(学名:Helostoma temmincki)」です。
スズキ目ヘロストマ科に分類される魚の一種であり、体長20cmほどで、東南アジアの淡水域に生息しています。
現地では食用魚(養殖されることもある)と見なされており、蒸したり焼いたりするなど、様々な調理法で食べられています。
一方、本来の生育域外にも移入されており、観賞魚としても高い人気を誇ります。
「キス」という独特の行動が人々の注目を引くため、日本、ヨーロッパ、北アメリカ、オーストラリアなど様々な地域の水族館で見かけることができます。
ちなみに、野生型と飼育型では色が異なり、野生型は灰色や緑色であるのに対し、飼育型では品種改良によってピンク色などの鮮やかな個体が作り出されています。
そして「キス」で有名なキッシンググラミーは、そのキスで使用する口や顎に大きな特徴があります。
キッシンググラミーの仲間には、「ドワーフグラミー」「チョコレートグラミー」などグラミーと名の付く魚が多数存在しますが、それらの魚が上向きの口を持っているのに対し、キッシンググラミーは前向きの口を持っています。
その口は前に長く突き出すことができるため、魚同士でキスをするのにぴったりです。
またアメリカ・アリゾナ州立大学(ASU)の2012年の研究では、キッシンググラミーの顎に存在する「追加の関節」に焦点を当てており、この関節が顎を開く角度を大きくし、捕食の効率を高めていることが報告されています。
では、その特徴的な口で行う「キス」行動には、どんな意味があるのでしょうか。