超新星爆発の贈り物がなければ生命は誕生しなかったかもしれない
46億年前、私たちの太陽系は何もない静かな空間でひっそり生まれたわけではありませんでした。
近くにいた大質量星が起こした壮絶な超新星爆発によって撒き散らされた放射性アルミニウムやチタン同位体の痕跡を、隕石がしっかりと刻み込んでいたのです。
そこから見えてきたのは、私たち自身の“母なる星”が、その大質量星だったかもしれないという壮大なドラマでした。
巨大な星が最後を迎えて散りゆく瞬間に、新しい星系の素となる物質を供給したことで、太陽系はより豊かな元素を得て現在のかたちへと進化してきました。
大質量星の“最期の贈り物”がなければ、地球や生命に必要な重元素は十分に供給されなかったかもしれません。
私たち地球生命が命を維持するには、炭素や水素といった主だった軽い材料だけでなく、微量ながら重たい金属も必要だからです。
大質量星が燃え尽きる際の閃光こそが、あとに続く星や惑星の“誕生スイッチ”を押すことだってあるのです。
また、研究によって開発された「アルミニウム−チタン宇宙核時計」は今後、惑星形成理論を再構築する重要な手がかりとなり、星間空間の化学進化や他の恒星系の成り立ちまで見通す足掛かりにもなるでしょう。
たとえば太陽系には、オウムアムアなど太陽系外に起源をもつ小惑星がまれに通過することが知られていますが、こうした系外天体を分析すれば、太陽系以外の恒星系の起源にも迫れるはずです。
さらに、これまでに得られていた隕石のPb–Pb年代や、ほかの短寿命放射性同位体(^53Mn–^53Cr、^182Hf–^182W など)のデータと組み合わせれば、それぞれの隕石母天体がどのような温度環境や時間スケールで形成・進化したのかを、いっそう高精度で再構築できる可能性が開けます。
たとえば小惑星探査機「はやぶさ2」が持ち帰った試料のような新鮮なサンプルにも応用すれば、太陽系初期の微惑星形成過程や、地球型惑星とガス惑星の差異を生じさせた要因について、より正確なイメージを得られるでしょう。