ミトコンドリアと脳の関係
![ミトコンドリアは学習、記憶、社会性を支えていた](https://nazology.kusuguru.co.jp/wp-content/uploads/2025/02/0d91878a779418a0bde5c50c64386339-900x506.jpg)
ミトコンドリアとエネルギー
私たちの体の中にあるミトコンドリアは、まるで小さな発電所のように、ATPというエネルギーを作り出し、体のあらゆる細胞に力を供給しています。
特に、脳は多くのエネルギーを必要とする器官です。
脳内のニューロンは、膨大な情報を処理し、学習や記憶、さらには友達や家族などを認識するための社会的な機能を発揮するため、正確で効率的なエネルギー供給が欠かせません。
面白いことに、ニューロンはその複雑な形に合わせて、必要な場所にミトコンドリアをうまく配置しています。
最新の研究によれば、ミトコンドリアはただエネルギーを作るだけではなく、細胞の中でどこにあるかによってその形や働きが大きく変わることがわかってきました。
例えば、海馬のCA2領域にあるニューロンでは、樹状突起(ニューロンの枝のような部分)の場所ごとにミトコンドリアの性質が異なり、学習や記憶のための神経回路の調整(シナプスの可塑性)に大きな役割を果たしています。
海馬CA2領域―社会的記憶の要
脳の記憶をつくる中心部である海馬の中でも、CA2領域はとても特別な場所です。
CA2は、友達や家族など、他人を識別し覚える「社会的記憶」に関わっており、他の海馬の領域(CA1やCA3)とは違った仕組みで働いています。
最新の実験では、CA2領域のニューロンが単に情報を記憶するだけでなく、実際に仲間や家族を区別するための記憶を作るのに重要な働きをしていることが明らかになりました。
特に、ニューロンの枝の先端(外側のシナプス部分)では、ミトコンドリアが特別な配置や働きをしているのが分かりました。ここでは、カルシウムを取り込むMCUというタンパク質が豊富にあり、神経活動に合わせてエネルギーを供給し、シナプスを強くする(長期増強、LTP)役割を果たしています。
これにより、必要なときに神経回路がうまく再編成され、私たちが人を認識するための記憶がしっかりと形作られているのです。