「孤独=寂しさ」の公式は成り立たない「孤独」は「寂しさ」と本質的に違う:本当は素晴らしい孤独
「孤独=寂しさ」の公式は成り立たない「孤独」は「寂しさ」と本質的に違う:本当は素晴らしい孤独 / Credit:Canva
psychology

「孤独=寂しさ」の公式は成り立たない:本当は素晴らしい孤独 (3/5)

2025.02.12 19:00:32 Wednesday

前ページ孤独のポジティブな側面:ひとりの時間がもたらす恩恵

<

1

2

3

4

5

>

孤独と寂しさの分岐点:どこから「心地よい」か「辛い」と感じるのか

「孤独=寂しさ」の公式は成り立たない「孤独」は「寂しさ」と本質的に違う:本当は素晴らしい孤独
「孤独=寂しさ」の公式は成り立たない「孤独」は「寂しさ」と本質的に違う:本当は素晴らしい孤独 / Credit:Canva

前章では、ひとりでいる時間がもたらすポジティブな側面を見てきました。

しかし、実際には「ひとりの時間」をどのように感じるかは人によって大きく異なり、心地よさと苦痛の間にはさまざまな要素が関係しています。

ここでは、その分岐点となる代表的なポイントを三つ取り上げ、どのような条件下でポジティブな孤独(solitude)がネガティブな寂しさ(loneliness)へと転じてしまうのかを探ってみましょう。

寂しさを感じるのに人はどれくらいの時間がかかるか?

「孤立状態が続けば、数日~数週間も経てば寂しくなるはず」と多くの人が思うかもしれません。

実際、研究によれば、社会的接触が制限される環境で2〜3日過ごした被験者は、主観的な寂しさやネガティブな感情、ストレス反応(コルチゾールの上昇など)を示す傾向が高まることが報告されています。

また、高齢者など特定の集団を対象とした長期的な観察研究では、数日から数週間にわたる孤立がうつ症状や免疫機能低下などのリスクと関連するという結果も得られています。

ところが、「寂しさを感じるまでには数日が必要」というイメージとは裏腹に、もっと短時間で寂しさが発生することを示す実験が存在します。

その代表例が、オンライン上の「排除」や「無視」を模擬する Cyberball実験(Williams, 2000 など)です。

この実験では、たった数分間、被験者が“他者からボールを回してもらえない”という状況を作り出します。

すると、わずかな時間でも参加者は強い拒絶感や寂しさを訴えることがわかっています。

この結果は、寂しさが単純に「どれだけ長くひとりでいたか」という時間的な要因だけで説明できるわけではないことを示唆しています。

むしろ、「自分は排除されている」「必要とされていない」という主観的な認知が生じると、数分から数秒という極めて短いスパンでも、心は即座に寂しさを感じ始めるのです。

逆にいえば、どんなに物理的・時間的に孤立しているように見えても、自分を気にかけてくれる存在や“いざというときに助けてくれる人がいる”という安心感があれば、寂しさは必ずしもすぐに生じるわけではありません。

つまり、寂しさは必ずしも「時間で決まる」ものではなく、心理的・社会的な要因が大きく影響しているのです。

数日かけてジワジワと募ることもあれば、たった数分の排除で瞬時に感じる場合もあります。

この点を理解しておくと、「まだそんなに時間が経ってないのに寂しいと感じるのはおかしい」という自己否定的な思考に陥らず、「人とつながりたい」「必要とされていたい」という人間の本質的な欲求が、思いのほか早く不安を生じさせることがあるのだと気づくことができるでしょう。

分岐点は個人差が大きい

また同じ「ひとりでいる状態」でも、それを快適に感じるか、寂しさを強く感じるかは、本人の捉え方や状態によって変わります。

心身ともに余裕があり、目的を持って「ひとりの時間を楽しもう」と思えているときは、新たな発想やリラクゼーションを得やすいでしょう。

一方、気分が落ち込んでいたり、外的ストレスが大きかったりする場合は「誰も自分の味方がいない」と感じやすくなり、結果として孤独感が辛い寂しさ(loneliness)へとつながりがちです。

Burger (1995) の研究によれば、人々には個人差(preference for solitude)があり、「どれくらいのひとりの時間を必要とするか」が人それぞれ異なっています。

外向的な人や社交性の高い人は短い孤独でも「寂しい」と感じるかもしれませんが、内向的な人や創造的な活動に没頭したい人は、ある程度まとまった時間をひとりで過ごしたほうが心地よいと感じるケースが多いのです。

このように、「自分はどのくらいのひとりの時間を必要としているのか」を理解しておくことは、孤独をポジティブに活かす第一歩と言えるでしょう。

自分で選んで孤独になっているか?

孤独と寂しさを分けるうえで、もうひとつ重要な観点が「自己選択かどうか」です。

自らの意思で「今はひとりになりたい」「この時間を活用して内省や創造的活動をしたい」と考えて取る孤独は、ポジティブな成果につながることが多い反面、望まない状況でひとりにされてしまう、あるいは人と関わりたいのに関われない状況が続くと、強い苦痛感を生み出します。

たとえば、仕事の都合などで物理的に人との接触が難しい環境に置かれたり、文化的・社会的背景が原因で差別や排除を受けて一人でいなければならなかったりといったケースでは、当然ながらポジティブな心境にはなりにくいでしょう。

こうした強制的な孤立が長期化すると、メンタルヘルス面での不調や自己評価の低下を深刻化させ、健康リスクを高める可能性があります。

逆に、自分のペースやライフスタイルに合わせて意図的に孤独を確保できる場合は、創造性や自己洞察、ストレス緩和などの恩恵を得られやすくなります。

「他者から切り離されている」のではなく、「自分自身で孤独を選んでいる」という感覚の違いが、心地よさと辛さを分ける大きな分岐点になるのです。

次ページSNSの利用は「寂しさ」を根本的に救ってくれるのか?

<

1

2

3

4

5

>

人気記事ランキング

  • TODAY
  • WEEK
  • MONTH

Amazonお買い得品ランキング

スマホ用品

心理学のニュースpsychology news

もっと見る

役立つ科学情報

注目の科学ニュースpick up !!