SNSの利用は「寂しさ」を根本的に救ってくれるのか?

スマートフォンひとつあれば、友人や知らない誰かとすぐに繋がれる時代。
SNSは、私たちの社会的ネットワークを拡大し、いつでも交流できる場を提供してくれる便利なツールです。
しかし、その手軽さゆえに、寂しさ(loneliness)を根本的に解消してくれる「魔法の薬」かのように期待されることがあります。
果たして、SNSは本当に寂しさを救う切り札になり得るのでしょうか。
たとえば Ellison, Steinfield, & Lampe (2007) の研究では、Facebook のような SNS は「ブリッジング・ソーシャル・キャピタル」を高める可能性があると報告されています。
つまり、共通の趣味や興味を持つ見ず知らずの人と気軽につながり、社会的ネットワークを広げるきっかけになるというわけです。
さらに、Burke, Marlow, & Lento (2010) や Deters & Mehl (2013) の研究からは、SNS上で積極的なやり取りや情報発信を行う人ほど、寂しさが軽減されたりポジティブな感情を得たりしやすいという傾向が示唆されています。
ただし、これには “積極的に交流する” という条件が大きく関わります。
受動的に他人の投稿を眺めてばかりだったり、「いいね」やコメントの数を人と比較したりする使い方は、逆に孤独感や自己評価の低下を招くリスクが指摘されているのも事実です。
また対面でのコミュニケーションと比べると、SNS上のやり取りは表情や声のトーンなど非言語的な情報が伝わりづらく、細やかな感情を共有しにくい側面があります。
また、Nowland, Necka, & Cacioppo (2018) の指摘にもあるように、SNSが提供するオンライン上の「つながり」は、上手に活かせば一時的に安心感を得られる一方で、対面交流のすべてを代替できるものではありません。
Hampton, Sessions, & Her (2011) も、オンライン上のやり取りがオフラインでの交流を完全に置き換えるわけではなく、むしろ両方を使い分けることで人間関係が深まるケースが多いと示唆しています。
では、SNSの利用は「寂しさ」を根本的に救ってくれるのでしょうか。
これは一概に「はい」とは言えないのが現状です。
Kraut et al. (1998) の「インターネット・パラドクス」をはじめ、多くの研究がオンライン交流の功罪両面を強調しています。
SNSの利用によって広がった人間関係が実生活の交流にもポジティブな影響を及ぼし、結果として孤立感を和らげることは十分あり得ます。
一方で、オンライン上でのつながりに依存しすぎるあまり、リアルな関係性が希薄になったり、過度な比較や承認欲求の強化によって寂しさを増幅させる危険も否めません。
結局のところ、SNSはあくまで “ツール” にすぎず、それ自体が万能薬として機能するわけではありません。
オンラインとオフライン両方のコミュニケーションをバランスよく活用し、心が疲弊しているときこそ人や専門家の助けを求めるなど、実生活に根ざした対策を取ることが「寂しさ」を本質的に和らげるカギとなります。
SNSが寂しさの解消に役立つことはありますが、その利用方法や個々人の状況次第で結果が異なる、という点を忘れてはならないでしょう。