中国4000年の歴史もびっくりな大発見
1990年、羽に猛毒をもつとわかった鳥、ズグロモリモズ。
この鳥は羽にバトラコトキシンという猛毒を持っていることがわかりました。この毒は先住民が毒矢に使うモウドクヤドクガエルの毒と同じです。
中国4000年の歴史もびっくり!羽に毒のある鳥は実在したのです。

ズグロモリモズが棲息するのは南方のジャングル、二音節に聞こえる特徴のある鳴き声、皮膚や羽に毒がある、肉は美味しくないので先住民は食べない、羽の毒は酒によく溶ける、蛇や猛禽類はこの鳥を襲わない。
鴆とズグロモリモズの特徴は驚くほど一致します。
バトラコトキシンは1mgで人間20人、ゾウなら2頭、ハツカネズミなら1万匹を殺す神経毒で、羽を酒に浸せば暗殺用の毒酒が造れるような猛毒です。
さすがに羽1枚というわけにはいきませんが、まさに鴆毒。
1mgはモウドクフキヤガエル1匹分の毒です。皮膚ににじみ出る液体を使えばいいので、モウドクヤドクガエルを使うほうが先住民にとっては簡単です。そのため鳥は重要視されてこなかった。それで羽に猛毒のある鳥がいるという話は現地からは浮かび上がってこなかったということでしょう。

同じく猛毒を持つトラフグはさばいた後の皮や内臓が厳しく管理の元におかれますが、バトラコトキシンはフグ毒テトロドトキシンの5倍の強さを持っています。
フグは好んで食べる餌によって毒を持つようになり、とりわけ産卵前のメスの毒は強くなることが知られています。孵化する稚魚が毒を持つことで捕食者に食べられにくくするためと考えられています。
中国伝説上の鴆も、毒のある蛇を食べることで猛毒を持つようになると言われていました。
これはあながち間違ってはいませんでした。
ズグロモリモズを解剖したところ、好んで食べる昆虫がバトラコトキシンを持っていることがわかったからです。ズグロモリモズ自体はバトラコトキシンに耐性を持つよう進化していました。
それでは、ズグロモリモズを飼育下で無毒の餌を与えて育てたらどうなるでしょうか。
そう、ご想像の通り、ズグロモリモズの羽は無毒になりました。食べたもので毒を持つようになっていたのです。
日本でも産学連携の研究で無毒のトラフグを養殖している水産会社があり、同様に餌が問題であるとしています。

フグ毒のテトロドトキシンには解毒剤がありません。しかし中国伝説の鴆毒は「サイの角が解毒剤になる」という伝説があります。
あくまでも伝説です。しかし猛毒を解毒してくれる薬。これは歴代皇帝や高級官僚たちは喉から手が出るほど欲しかったことでしょう。
伝説の中でも、皇帝の代わりに鴆毒と知って毒酒を飲んだ忠臣のために解毒剤を持ってこさせたが間に合わず死亡したという話があります。解毒剤は常に手元にあったのでしょう。でも、きっとそれを飲ませても効かなかったことでしょう。
ズグロモリモズが見つかったのはニューギニアです。しかし、古代、中国の南方にもズグロモリモズ、もしくは別の羽に猛毒を持つ鳥が棲息していたのかもしれません。
伝説通り、皇帝の命令で駆除されて現在は中国にはいないのかもしれませんし、鴆を駆除しようとした時に、餌となる猛毒の昆虫のほうがひっそりと絶滅したのかもしれません。
中国はとても広いので、人間の入り込めないようなどこかで、ひっそりと鴆が生き続けているかもしれないと考えるのはちょっと楽しいですね。

古代の人間たちって現代人の想像を超える範囲を移動して交流持っていた痕跡がときどき見つかっていますから、古代の中国がそのあたりの国の生き物を手に入れていてもおかしいとは思えないところが逆にすごいというか…。
古代エジプト王朝が当時アメリカ大陸にしかなかったはずの鉱石だったか植物だったか持ってたっていう話も以前ありましたし。