日本の水族館に残っているラッコはメスの2頭のみ
日本の水族館に残っているラッコはメスの2頭のみ / Credit: Wikimedia Commons/ナゾロジー編
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【残念過ぎる現実】日本の水族館からラッコが消える日が近い (2/2)

2025.03.16 17:00:21 Sunday

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ラッコ飼育、もうひとつの問題と新しいアイドルの登場

水族館はもうひとつ、別の問題を抱えていました。

ラッコは北太平洋に棲息するため、飼育するプールの水温は低く保つ必要があるほか、水は清潔でないと適切な体温調節と浮力を得られません。施設の管理に手がかかります。

さらにラッコの餌はウニ、貝、甲殻類といった高級食材。しかも1日に体重の25%の量を食べます。メスで15~30kg程度の体重があるので、仮に体重が20kgだったとしたら毎日5kgの高級食材を平らげているわけです。

餌代はひと月いくらになるでしょうか。

私たち、毎日ウニとかカニなんて食べられませんよね!そういうのはたまのご馳走です。

でもラッコはそれが日々の「ごはん」なんです。もう「餌」とかいえません……。

圧倒的にウニが多いのはジャイアントケルプの生えている海にいるせいか?
圧倒的にウニが多いのはジャイアントケルプの生えている海にいるせいか? / Credit: Wikimedia Commons

あ、でも鳥羽水族館で与えているのは、貝、イカ、カジキ、タラ、エビ、カニあたりだそうです。さすがにウニは無理か。

ラッコは繁殖の難しさに加えて、施設の維持管理、そして餌の確保とその値段という飼育にとてもコストのかかる動物だということがいえるのです。

そして、このタイミングでコツメカワウソが新たなアイドルとして登場しました。

コツメカワウソは日本でも繁殖に成功しているだけでなく、肩に乗せて写真を撮るようなふれあいもできるなど集客しやすい点が大きいだけでなく、餌はラッコのような高級食材を用意する必要がないため、コスト的にも大きなメリットがあります。

ちなみに江ノ島水族館で与えているのは、むきエビ、アジ、バナメイエビ、ニジマス、むきアサリだそうで、割と庶民的。日本人の普段のおかずに近いですね。

それでも体重の20%食べるのですが、コツメカワウソの体重は軽く、3kg前後~5kg前後。5kgだとしても餌は1日1kgで、ラッコよりずっと少ないです。幸いなことに繁殖例も出てきました。

ガラス越しに見ているだけでも癒されて、時間があっという間に溶けてしまうラッコですが、コツメカワウソだと肩に乗せて写真撮影したり、握手できたりする水族館もあります。

雲の上のスターと、握手会に参加できる身近なアイドルぐらいの開きがあります。

水族館でもアイドル像は変遷していくということでしょうか。

可愛いコツメカワウソと握手できるとしたら、ちびっ子たちは大喜びですね。もしかしたら大きなお友だちも大喜びかも。

仕草が愛らしいうえに飼育コストがラッコより低く集客もばっちりなコツメカワウソ
仕草が愛らしいうえに飼育コストがラッコより低く集客もばっちりなコツメカワウソ / Credit: Wikimedia Commons

ラッコよりローコストで集客もばっちりだとしたら、日本の水族館からラッコが消える日が来ても、めちゃくちゃ大きな喪失感は感じないで済むということになるのでしょうか。

いやいや、やはりラッコはラッコでとても可愛い動物です。もうリアルなラッコを間近に見られなくなるのはとても残念です。

子パンダを抱っこして写真が撮れる(料金高いのに)という理由が大きくて中国四川省を旅する人もいる時代です。ラッコは抱っこできませんが、将来的には生きて動く姿を見るために海外旅行するという選択肢も出てくるでしょう。

ラッコのいる海外の水族館だとアメリカ合衆国がダントツで多くなっています。

アメリカのモントレー・ベイ水族館なら野生のラッコも見られるかも
アメリカのモントレー・ベイ水族館なら野生のラッコも見られるかも / Credit: Wikimedia Commons

中でもカリフォルニア州のモントレー・ベイ水族館(https://www.montereybayaquariuhttps://www.montereybayaquarium.org/m.org/)ではラッコの保護も行っています。ここではラッコは地元の生き物。当然飼育されているわけですが、展望スペースからモントレー湾を眺めると……

ラッコが泳いでいることがあります。運が良ければ野生のラッコも観察できるでしょう。

毎回見られるわけではないと思いますが、フィッシャーマンズワーフあたりでも野生のラッコが見られるという情報もあるので、ラッコ目当てで行くならモントレー・ベイ水族館がおすすめかもしれません。

ちなみにモントレー・ベイ水族館はラッコのライブカメラもあります。この円安の折に海外旅行なんてという方は、リアルではありませんが、ぜひこちらを。

モントレー・ベイ水族館ラッコのライブカメラhttps://www.montereybayaquarium.org/animals/live-cams/sea-otter-cam

実は野生のラッコは日本にも生息しています。

北海道の道東、霧多布岬沿岸では、野生のラッコが数頭見られるようになり、季節になると子育てをする様子を観察できることも出てきました。

日本でもアメリカのように、野生のラッコをいつでも問題なく観察できる日が来るといいですね。数が増えることを祈りましょう。人間を警戒しなくなれば、近くまで寄ってきてくれる日も来るかもしれません。

ラッコは興味深い生態と可愛いルックスを持つ希少動物。水族館で簡単に会えるならこんな幸せなことはありませんが、一番の幸せは野生の状態で十分に増えてくれることです。

残念なことに、日本の水族館からはラッコが消える日は近づいています。

日本の水族館では見られなくなる日が近づいているラッコ
日本の水族館では見られなくなる日が近づいているラッコ / Credit: Wikimedia Commons

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【残念過ぎる現実】日本の水族館からラッコが消える日が近い (2/2)のコメント

らっこまにあ

ラムサールは湿地帯限定じゃなかったのか。。。。、

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