妊娠中の生活が子どもの未来を変える?
トゥルク大学の研究チームは、「過体重または肥満の女性が出産する子どもは、運動発達にどのような影響を受けるのか?」という疑問を探るために、フィンランド南西部で2013年から2017年にかけて実施された臨床試験のデータを活用しました。
この研究には、妊娠18週未満でBMIが25以上の女性439人が参加し、妊娠初期および後期の食生活、体脂肪率、妊娠糖尿病(Gestational Diabetes Mellitus, GDM)の有無、抑うつ・不安症状などが記録されました。
その後、子どもが5~6歳になった時点で追跡調査を行い、生まれた子どもの運動能力を「Movement Assessment Battery for Children – Second Edition(Movement ABC-2)」という国際的な運動能力評価ツールで測定しました。
なんだか長い名称ですが「Movement ABC-2」は、日本語で言うと「子どもの運動評価バッテリー 第2版」というような意味になります。
これは子どもの運動能力を総合的に測るために開発されたテストで、手先の器用さ、目と手の協調、バランス能力の3つの主要なスキルを評価します。
ちなみに初版は1992年に登場し、2007年に改訂されて現在の第2版が広く使用されています。
こうしたデータをもとに、母親の妊娠中のライフスタイルが子どもの運動発達にどのような影響を与えるのかを統計的に解析したのです。
研究の結果、子どもの運動能力には母親のライフスタイルが大きく影響することが判明しました。
まず、母親が健康的な食生活を送っていた子どもは、運動能力テストのスコアが高い傾向にありました。

特に、妊娠初期に野菜や果物、魚、全粒穀物を多く摂取していた母親の子どもは、手先の器用さや目と手の協調能力が優れていたのです。
魚の摂取量が多いほど、その傾向が顕著であることも分かりました。
一方で、母親の体脂肪率が高いと、子どもの運動発達が遅れる可能性があることも明らかになりました。
特に妊娠後期に体脂肪率が高かった場合、子どもが発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder, DCD)を持つリスクが高まる傾向が見られ、後期の体脂肪率が1%増加するごとに、運動障害のリスクが1.12倍に上昇していたという。
また、妊娠糖尿病(GDM)については、子どもの運動能力に統計的に有意な影響を与えないという結果が出ました。
これは、GDM自体よりも、それに伴う食生活や体重管理の影響がより重要なのかもしれません。
しかし、今回の研究で意外だったのが、妊娠中の母親の抑うつ症状が、子どもの運動能力向上と関連していたことです。