なぜ「歯」を目に移植するのか?

視力を失う原因はさまざまですが、その中でも角膜が損傷し、外部からの光をうまく取り込めなくなる視覚障害は深刻な問題です。
これには例えば、自己免疫疾患や化学火傷によって角膜が損傷し、通常の角膜移植では治療できないケースがあります。
そんな患者に対して行われる奥の手が、歯を使った人工角膜移植「トゥース・イン・アイ手術」です。
この手術では、患者本人の歯を取り出し、その内部にプラスチック製の光学レンズを埋め込みます。
そして、この「歯に埋め込まれたレンズ」を目の中に移植することで、新しい視力を得るのです。
なぜ歯が使われるのかというと、歯には人体が作る中で最も硬い物質である「象牙質」が含まれており、これがプラスチック製のレンズと患者の目をつなぐ丈夫で理想的なカバーとなるからです。
また患者本人の歯を使うので、移植による拒絶反応が起こりにくい利点もあります。
この手法は1970年代から研究が進められており、10カ国で実際に患者の視力を回復させることに成功してきました。
では、トゥース・イン・アイ手術はどのような手順で行われるのでしょうか?