血圧を下げる薬がADHD治療薬として驚くべき可能性を秘めている
血圧を下げる薬がADHD治療薬として驚くべき可能性を秘めている / Credit:Canva
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血圧を下げる薬がADHD治療薬として驚くべき可能性を秘めている

2025.03.05 22:00:10 Wednesday

「“血圧を下げる薬”が、多動症(ADHD)の新たな治療選択肢になり得るかもしれない――イギリスのポーツマス大学(University of Portsmouth)で行われた研究によって、そんな驚きの研究結果が明らかになりました。

現在のADHD治療はメチルフェニデートやアンフェタミン系の薬が中心ですが、食欲不振や不眠といった副作用、さらに乱用や依存のリスクが懸念されるほか、約4人に1人は十分な効果を得られないという課題があります。

そこで今回注目を集めているのが、血圧降下薬として世界中で広く処方されている「アムロジピン」。

研究グループはまず、ラットや遺伝子操作を行ったゼブラフィッシュなど多様な動物モデルを用いて、この薬がADHDの主要症状である過活動や衝動性を抑える可能性を確認しました。

さらに、ヒトの大規模遺伝データを解析する最先端の手法「Mendelian randomization(MR)」を駆使したところ、アムロジピンが作用するカルシウムチャネル関連遺伝子変異がADHDリスクに因果的な影響を及ぼす可能性が示唆されたのです。

アムロジピンはニフェジビンと一緒に現在のカルシウムチャネルを制御するタイプの降圧剤として、最も使われている成分です。

既存薬では十分に改善しない患者さんにとって、新たな選択肢となる期待が高まる成果です。

安全性や入手しやすさという面でも有利とみられており、今後の臨床研究によって“血圧の薬”が脳の働きをどのように変え、ADHD治療にどこまで貢献できるのかが明らかにされていくでしょう。

研究内容の詳細は『Neuropsychopharmacology』にて発表されました。

Validation of L-type calcium channel blocker amlodipine as a novel ADHD treatment through cross-species analysis, drug-target Mendelian randomization, and clinical evidence from medical records https://doi.org/10.1038/s41386-025-02062-x

ADHDの薬探しに血圧降下薬が引っかかった

血圧を下げる薬がADHD治療薬として驚くべき可能性を秘めている
血圧を下げる薬がADHD治療薬として驚くべき可能性を秘めている / Credit:Canva

注意欠如・多動症(ADHD)は、世界人口の2~5%にみられるとされる発達障害です。

子どもの頃から不注意や多動・衝動性といった症状が続く場合が多く、日常生活や対人関係に深刻な影響を及ぼしやすいのが特徴です。

主流の治療としてはメチルフェニデートやアンフェタミン系薬剤などの刺激薬が処方されますが、食欲不振や高血圧、頭痛、不眠などの副作用に加え、依存や乱用のリスクも懸念されます。

また患者のうち約25%は、これらの刺激剤を飲んでも症状に目立った回復がみられないことが報告されています。

こうした背景を踏まえ、研究チームはゼブラフィッシュを用いた遺伝子操作モデルを構築し、ADHD症状を示す個体を対象に複数の化合物の効果を検証しました。

その結果、アムロジピンを含む5種の化合物が有望な候補として浮上しました。

アムロジピンは血圧を下げる目的で世界的に広く使用されている薬であり、副作用や安全性についての実績も豊富です。

ただし、本当にADHD症状にも効果を発揮するのか、そしてどのようにへ作用するのかは十分に検証されていません。

そこで研究者たちは、ラットをはじめとする動物モデルやヒトの大規模遺伝データを使い、アムロジピンの「ADHD治療薬としての可能性」を多角的に確かめることにしました。

すると、アムロジピンを投与した個体では衝動性が低下し、ADHDの主要症状のひとつである“衝動的な反応”が緩和される可能性が示されました。

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