ADHDの薬探しに血圧降下薬が引っかかった

注意欠如・多動症(ADHD)は、世界人口の2~5%にみられるとされる発達障害です。
子どもの頃から不注意や多動・衝動性といった症状が続く場合が多く、日常生活や対人関係に深刻な影響を及ぼしやすいのが特徴です。
主流の治療としてはメチルフェニデートやアンフェタミン系薬剤などの刺激薬が処方されますが、食欲不振や高血圧、頭痛、不眠などの副作用に加え、依存や乱用のリスクも懸念されます。
また患者のうち約25%は、これらの刺激剤を飲んでも症状に目立った回復がみられないことが報告されています。
こうした背景を踏まえ、研究チームはゼブラフィッシュを用いた遺伝子操作モデルを構築し、ADHD症状を示す個体を対象に複数の化合物の効果を検証しました。
その結果、アムロジピンを含む5種の化合物が有望な候補として浮上しました。
アムロジピンは血圧を下げる目的で世界的に広く使用されている薬であり、副作用や安全性についての実績も豊富です。
ただし、本当にADHD症状にも効果を発揮するのか、そしてどのように脳へ作用するのかは十分に検証されていません。
そこで研究者たちは、ラットをはじめとする動物モデルやヒトの大規模遺伝データを使い、アムロジピンの「ADHD治療薬としての可能性」を多角的に確かめることにしました。
すると、アムロジピンを投与した個体では衝動性が低下し、ADHDの主要症状のひとつである“衝動的な反応”が緩和される可能性が示されました。