地球最後のフロンティア「深海」を探る
深海は長らく「地球最後のフロンティア」と呼ばれ、研究が困難な領域とされてきました。
その最大の理由は、極端な水圧、完全な暗闇、低温という厳しい環境条件にあります。

過去には、探査船「チャレンジャー号」が深海生物の存在を示唆するデータを提供し、1960年には「トリエステ号」が水深2万メートルを超えるマリアナ海溝の最深部「チャレンジャー海淵」に到達しました。
しかし、これらの探査ではごく限られた情報しか得られませんでした。
近年では、リモート操作無人探査機(ROV)や有人潜水艇(HOV)の発展によって、高精度なサンプル収集やリアルタイム観察が可能になっています。
今回の調査では、中国の有人潜水艇「奮闘者号(Fendouzhe)」を使用し、33回以上の潜航を行いながら大規模なサンプリングを実施しました。
研究者たちは、水深6000~1万900メートルの海溝底部、斜面、周辺の異なる地形から、数千点の堆積物、海水、大型生物のサンプルを採取しました。
そして採取したサンプルを最先端の技術で解析することで、これまで解明されてこなかった深海の生態系が明らかになりました。