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偽情報の免疫力を社会につける!「心理的ワクチン」という新しい対策

2025.03.15 11:30:10 Saturday

インターネットとSNSの普及により、私たちはかつてないほどの情報に囲まれています。

しかし、そのすべてが真実とは限りません。

SNSの投稿、ネットニュース、動画コンテンツ、その中には誤った情報や、巧妙に仕組まれた偽情報が紛れ込んでいます。

こうした情報がもたらす影響は計り知れません。

新型コロナウイルスのワクチンに関するデマが広がったことで接種率が低下し、結果的に多くの命が危険にさらされたり、政治の世界でも、フェイクニュースが選挙結果を左右するほどの影響力を持つようになっています。

情報の信頼性が揺らぐと、社会そのものが不安定になり、人々の判断を誤らせてしまう可能性があります。

こうした問題に対処するため、これまでにさまざまな対策が考えられてきました。

例えば、SNSプラットフォームによる偽情報の削除や、ファクトチェック機関による検証などです。

しかし、こうした方法には課題もあります。

情報を削除する行為は表現の自由を侵害する可能性があり、ファクトチェックが追いつかないケースも少なくありません。

では、どうすれば偽情報の脅威から社会全体を守ることができるのでしょうか?

そこで注目されているのが、「情報に対する免疫力」をつけるための「心理的予防接種(inoculation theory)」という考え方です。

これは、ワクチンが病気に対する免疫を作るのと同じように、あらかじめ「弱めの偽情報」に触れることで、実際の偽情報に騙されにくくするという方法です。

しかし、従来の研究では、心理学的予防接種の効果が時間の経過とともに薄れてしまうことが指摘されていました。

では、どのようにすれば偽情報に対する耐性を長く維持できるのでしょうか?

この課題を解決するために考案されたのが、「心理学的ブースターショット」です。

この研究は、オックスフォード大学やケンブリッジ大学をはじめとする国際的な研究チームによって行われ、2025年3月に『Nature Communications』に掲載されています。

New research reveals psychological booster shots can strengthen resistance against misinformation https://www.ox.ac.uk/news/2025-03-11/new-research-reveals-psychological-booster-shots-can-strengthen-resistance https://www.ox.ac.uk/news/2025-03-11-new-research-reveals-psychological-booster-shots-can-strengthen-resistance
Psychological booster shots can strengthen resistance against misinformationhttps://doi.org/10.1038/s41467-025-57205-x

偽情報に対する社会の免疫力を強化する心理的予防接種

情報にもワクチンが必要/Credit:canva

偽情報に対抗する手法として、近年注目されているのが「心理的予防接種(inoculation theory)」です。

これはウイルスに対するワクチンと同じように、あらかじめ弱い偽情報に触れることで、実際に強力な偽情報に遭遇した際に騙されにくくするというものです。

これまでの研究では、テキストベースの教育、ゲーム形式のトレーニング、動画コンテンツを活用した手法が試されてきました。

例えば、テキストを用いた教育では、偽情報の典型的なパターンを解説し、論理の欠陥を指摘することで、受け手が冷静に情報を評価できるようになります。

ゲーム形式のトレーニングでは、「Bad News」というゲームを通じて、プレイヤーが実際に偽情報を作成し、その過程を体験することで、デマの手口を学ぶことができます。

さらに、短い動画を活用した教育では、視聴者が手軽に学びながら、偽情報を見抜くためのスキルを養うことができます。

しかし、すべての手法に共通して、時間の経過とともに効果が薄れてしまうという課題がありました。

特に、ゲーム形式のアプローチは即効性があるものの、持続性が低いことが分かっています。

つまり、一度学んだからといって、その効果が永久に続くわけではなく、時間の経過とともに再び偽情報の影響を受けやすくなってしまうのです。

今回の研究は、この課題に対する新たな視点を提供しました。

それが、「心理的ブースターショット」という考え方です。

ブースターショットとは、医療においてワクチン接種後に免疫が低下する問題に対処するため、一定期間を空けて追加接種することを指します。

偽情報に対する耐性を長期間維持するた際にも、医療の場合と同様に定期的な「再学習」が有効かもしれないのです。

次ページ社会全体の偽情報耐性を高めるために

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