ブラックホールは「ホワイトホール」に変化する可能性がある
ブラックホールは「ホワイトホール」に変化する可能性がある / Credit:Canva
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ブラックホールは「ホワイトホール」に変化する可能性がある (2/3)

2025.03.18 21:00:04 Tuesday

前ページ量子重力が描く“ブラックホールの真実”とは

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ブラックホールはホワイトホールに変化する

ブラックホールはホワイトホールに変化する
ブラックホールはホワイトホールに変化する / Credit:Canva

ブラックホール内部の特異点を量子重力的にみるとどうなるのか。

調査にあたってはまず、解決すべき問題を絞ることから始められました。

一般相対性理論では、ブラックホール内部の時空は、数え切れないほど多くの要素(ピース)で構成されており、すべてを一度に考えるのはほぼ不可能です。

そこで科学者たちは、「この中で本当に大切な部分はどこだろう?」と問い、ブラックホール内部の核心的な特徴、たとえば全体の体積や空間の歪みといった数個の重要な変数だけに注目しました。

つまり、膨大な情報の中から、本質を捉えるために必要最小限のピースだけを選び出し、シンプルなモデルとして扱ったのです。

この方法は、決して雑な近似や適当な単純化ではありません。

むしろ、ブラックホール内部のような極めて複雑なシステムの本質的な性質、例えば全体の体積の変化や時空の歪みといったキーポイントに焦点を絞ることで、解析可能な形に整理する非常に有効なアプローチです。

実際、1960年代にジョン・ウィーラーたちが、無限の可能性を持つ時空の状態全体(スーパー空間)から宇宙の大まかな膨張や縮小という基本的な動きを捉えたのも同様の手法だといえます。

問題が絞られると、次に研究者たちはブラックホールに量子力学を適用し、ブラックホール内部の状態を波動関数で書き表すことを目指しました。

ここで重要なのは、ブラックホール内部を量子力学で記述するとき、情報が「消えてしまわない」ように、すべての時間の流れが連続的かつ一貫していることを求める点です。

たとえば、古典物理をベースにした解釈では、ブラックホール内部に突入すると、まるで映画のワンシーンで主人公が突然崖から転落して物語が途絶えるように、時間の流れが突然切れてしまいます。

しかし、量子力学ではこのような断絶は起こらず、すべての瞬間がスムーズに繋がっており、情報が突然喪失することはありません。

そこで研究者たちはブラックホールの内部の状態を、このような量子力学をベースにしたモデルへと書き直したのです。

具体的には、ブラックホールの中心部をできるだけシンプルに把握するため、「カスナー型時空」という簡略モデルを採用しました。

さらに、このモデルに「ユニモジュラー時間」という特別な“時計”を導入し、量子力学(小さな粒子の世界の法則)を使って解析を進めたのです。

すると、普通なら「特異点」という何もかもが押しつぶされる“終点”や、「ホライズン」という入り口・境界があるはずの場所が、なんと“バウンス領域”――つまり“跳ね返り”が起きる場に置き換わることがわかりました。

イメージとしては、ボールが地面に落ちるときに、そのまま地面に飲み込まれて終わりではなく、弾んで跳ね返るようなものです。

ブラックホールの中心で重力がぎゅうぎゅうに押しつぶすはずが、量子の効果で逆向きに跳ね返る動きが発生し、結果としてホワイトホール(物質や情報を外へ放出するような存在)へと繋がるかもしれない、という可能性が浮かび上がりました。

これは、従来の理論では「特異点で終わり」と考えられていたブラックホールの姿を、大きく塗り替えるかもしれない大胆なシナリオだといえます。

つまり、内部では本来ブラックホールに吸い込まれるべき状態が、時間反転的な進化を経て、ホワイトホールの性質を帯びた状態に切り替わるのです。

ブラックホール内部で物体がまっすぐ落ちていくのではなく、何かしらの「跳ね返り」作用によって逆方向に進むことで、情報が失われずに保存され、連続的な進化が保証されます。

結果として、ブラックホール内部は、内向きの状態(ブラックホール状態)と反転した外向きの状態(ホワイトホール状態)が重なり合った、時間反転的な進化が見られる領域になるわけです。

片方がすべてを呑み込む“ブラックホール”の動き、もう片方が吐き出す“ホワイトホール”の動きが、量子的には同時に存在しているかのような状況といえます。

例えるなら、一枚の紙に描いた滝の絵と、逆に空へ上っていく噴水の絵が、透明なシートを重ねたように二重写しになっているようなものです。

古典論では「滝が下へ落ちる」か「噴水が上へ噴き出す」かのどちらかしかありません。

しかし、量子論ではこのふたつが重なり合い、観測の仕方や境界条件によって一方の性質が表に出る――そんな不思議なイメージが見えてきます。

さらに論文著者のギーレン氏は「観測者がブラックホールの特異点と考える場所を通過して、ホワイトホールの反対側に現れる可能性があります」とより大胆な仮説も提示しています。

もちろん、実際のブラックホールはもっと複雑で、ホーキング放射による蒸発などの外側の要素も考慮が必要です。

それでも、このモデルが示すバウンス現象や重ね合わせ状態は、ブラックホールの内部構造が私たちの想像以上にダイナミックで、情報喪失問題や特異点問題に対して思い切った解決策を用意している可能性を示唆します。

そこで問題になるのが、このようなホワイトホールをどう解釈すべきかという点です。

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