人類進化の物語が一変する
これまで、私たち人類がどのようにして進化したかについては、アフリカで現れた「ホモ・サピエンス」という単一の祖先から進化したというシンプルな物語が主流でした。
ところが今回発表された研究はその考えを覆すものです。
ケンブリッジ大学の研究者たちは、現代人類が実は約150万年前に分かれた2つの異なる祖先集団の再統合によって形成された可能性があることを示しました。
ここで浮かび上がるのは、今まで知られていなかった人類進化の隠された部分です。
人類はひとつの流れで進化したのではなく、2つの異なる集団が分岐した後、約30万年前に再び出会い、遺伝的な交流を行ったと考えられています。
この発見により、人類の歴史は単純なものではなく、複雑で多様な過程を経ていることが明らかになったのです。

研究チームは今回、古代の骨から遺伝物質を抽出するのではなく、現代人のDNAを分析する方法を用いて、物理的な痕跡を残さなかったかもしれない祖先集団の存在を推測しました。
この研究で使用されたデータは、アフリカ・アジア・ヨーロッパ・アメリカ大陸の各地の集団からDNAを解析した「1000ゲノムプロジェクト」という国際的な取り組みから得られたものです。
その結果、現生人類の祖先は約150万年前に2つの異なる遺伝的集団に分岐していたことが明らかになりました。
その後、2つのグループは互いに交わることなく別々に生きていたようですが、約30万年前に再び2つのグループが融合していた遺伝的証拠が見つかったのです。
現生人類の遺伝子データを見ると、一方の多数派だったグループは遺伝物質の約80%を私たちに提供しており、もう一方の少数派だったグループは残りの20%ほどを提供していることがわかりました。
さらにこの少数派のグループは分岐した後の進化の過程で、深刻なボトルネック(人口の急激な減少)を起こしていたことが示されています。