プラスチック汚染の現実とバクテリアの可能性

プラスチックは軽くて丈夫、そして加工しやすいことから、20世紀以降に爆発的に普及し、現在では年間約4億トンが生産されています。
しかし、そのほとんどが石油を原料にした合成プロセスに依存しているため、大量消費と使い捨ての文化が環境に深刻な負荷をかけています。
燃やせば二酸化炭素(CO₂)の増加につながり、土や海に埋めても分解されにくいため、微小なマイクロプラスチックとして長期間残留し、人や動物の健康リスクが懸念されています。
そこで近年、バクテリアなどの微生物を利用して「環境に優しいプラスチック」を作ろうという試みが進められています。
たとえば一部のバクテリアは、栄養が不足したときに体内にPHA(ポリヒドロキシアルカノエート)というポリエステル系の物質を蓄える性質があります。
PHAは生分解性が期待できるため、石油に依存しないプラスチック生産の候補として研究されてきました。
しかし、ナイロンのように「アミド結合(窒素原子を含む結合)」を含む強靭な素材を、バクテリアで直接生み出すことは簡単ではありません。
アミド結合を連続的につなげるための酵素は自然界でほとんど発見されていないからです。
そこで研究者たちは、大腸菌(遺伝子の改変が容易で多くの実験研究に使われる細菌)に特殊な酵素遺伝子を組み込み、「アミノ酸」を連ねてナイロンに似たプラスチックを生合成させるという全く新しいアプローチに挑みました。