バクテリアが拓くプラスチック革命

今回の成果が革新的なのは、自然界に存在しない「ナイロン風のアミド結合」をバクテリアに直接作らせた点にあります。
従来のバイオプラスチック研究はポリエステル系が中心でしたが、この手法ならアミノ酸を組み込むことで、強度や耐久性、さらには分解性までもコントロールしやすくなります。
まさに合成生物学の力でプラスチックを「自由設計」できる可能性を示しており、環境への配慮と実用性を両立した新素材開発の道が大きく拓けたと言えます。
Uluu社のColin Scott氏も「今回の研究は、生分解性プラスチックに新しい機能を持たせる可能性を大きく広げる」と期待を寄せています。
とはいえ、まだ課題は少なくありません。
バクテリアの細胞を破壊して抽出する際の精製コストや、ポリマー鎖をより長く安定させる方法の確立など、改良すべき点がいくつも残されています。
それでも、「ナイロンのような機能性を微生物に任せて作る」という発想は、従来の石油由来プラスチック製造を抜本的に変える可能性があります。
今後、培養条件のさらなる最適化や酵素の改変技術の進歩により、より使いやすく環境負荷の少ないプラスチックが誕生することが期待されます。
合成生物学を駆使したバイオプラスチック研究は、持続可能な社会を支える重要な分野として、ますます注目を集めるでしょう。