ADHDと学習障害は因果的なものではなく共通遺伝子の可能性/Credit:canva
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「ADHD・読字障害・算数障害に共通遺伝子の影響」2万人規模の双子研究が指摘

2025.03.25 11:30:50 Tuesday

ADHDのある子どもは、教室でじっとしていられない、すぐに注意が逸れてしまうといった特徴が知られています。

ところが、それだけではありません。

文字を読むのが極端に苦手だったり、簡単な計算がなかなか理解できなかったりすることもしばしばあるのです。

これらの困難は「発達性読み書き障害(ディスレクシア:Dyslexia)」や「発達性算数障害(ディスカルキュリア:Dyscalculia)」と呼ばれ、いずれも学習障害(LD)の一種に分類されます。

では、なぜADHDと読み書き・計算の障害は一緒に現れることが多いのでしょうか?

これまではその理由について、「集中できないから勉強もうまくいかない」と単純に理解されていました。しかし、そうではなかったのかもしれません。

オランダのアムステルダム自由大学(Vrije Universiteit Amsterdam)を中心とした研究チームが、約2万人の双子を対象にした大規模な追跡調査を行ったところ、これらの障害が一緒に現れる背景には、共通遺伝子の影響がある可能性が示されたのです。

この研究成果は2025年3月に、心理学の有力ジャーナル『Psychological Science』に掲載されています。

Shared genes explain why ADHD, dyslexia, and dyscalculia often occur together, study finds https://www.psypost.org/shared-genes-explain-why-adhd-dyslexia-and-dyscalculia-often-occur-together-study-finds/
Co-Occurrence and Causality Among ADHD, Dyslexia, and Dyscalculia https://doi.org/10.1177/09567976241293999

ADHDの子は本当に勉強も苦手?

Credit:canva

ADHD、発達性読み書き障害、発達性算数障害はいずれも、知的発達には問題がないにもかかわらず、日常生活や学校生活に支障をきたす発達特性です。

それぞれの特性が単独で現れることもありますが、複数が同時に存在するケースも少なくありません。

たとえば、ADHDを持つ子どものうち、約半数近くが読み書きや算数の困難も抱えているという報告があります。

では、これは単なる偶然なのでしょうか?

あるいは、ADHDの症状が原因で学習に集中できず、結果的に読み書きや計算も苦手になるという因果関係があるのでしょうか?

それとも、もっと根本的な共通原因が存在するのでしょうか?

この問いを解明するため、研究チームは「双子研究」というユニークな手法を取りました。

双子研究では、一卵性双生児(一卵性双生児は遺伝子をほぼ100%共有)と二卵性双生児(遺伝子共有率は約50%)を比較することで、ある特性がどれほど遺伝に影響されているのかを調べることができます。

今回の研究では、オランダ双子登録(Netherlands Twin Register)に基づき、1989〜2009年に生まれた双子1万9125組(約2万人)のデータを解析

子どもたちが7歳と10歳のときに、教師からのADHD評価と全国統一の学力テスト(読み、書き取り、計算)結果を収集しました。

研究者たちは、これらの発達特性がどの程度重なって出現するかを調べるだけでなく、それぞれの能力の変化が互いにどう影響し合っているかも長期的に追跡しました。

たとえば、「ADHDがあると将来的に読みが苦手になるのか?」「逆に読みの困難がADHD症状を悪化させるのか?」といった因果関係にも迫ったのです。

次ページ見えてきたのは「遺伝の重なり」だった

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