火星には約37億年前に「湖」があった

キュリオシティは2012年に、火星の赤道付近にある「ゲール・クレーター」へと着陸しました。
それ以来、「火星にかつて生命が存在していたのか」あるいは「生命誕生に近い状態にあったのか」という謎を解き明かすために、地質学的な手がかりを集めています。
実際に、キュリオシティによるこれまでの調査で、ゲール・クレーターが約37億年前には水で満たされた古代湖だったことが明らかになっているのです。
キュリオシティが採取した「カンバーランド試料」と呼ばれるサンプルは、粘土鉱物を豊富に含んでおり、これはかつてこの地に水が存在したことを物語っていました。
加えて、動植物の健康に欠かせない硝酸塩が多く含まれていたり、地球上では生物由来とされるタイプの炭素からできたメタンも検出されているのです。

これらを踏まえて、NASA・ゴダード宇宙飛行センターのダニエル・グラヴィン(Daniel Glavin)氏はこう話しています。
「ゲール・クレーターには数百万年、あるいはそれ以上の長期間にわたって液体の水が存在していた証拠があります。
つまり、火星のこのクレーター湖のような環境では、生命を形づくる化学反応が進行するのに十分な時間があったと考えられるのです」
そこで研究チームは今回、生命の体を形作るのに欠かせないタンパク質を構成するアミノ酸の痕跡を探すため、新たにカンバーランド試料を調査しました。
カンバーランド試料はまだ地球には持ち帰れていないので、キュリオシティに搭載されている「SAM(Sample Analysis at Mars)」という分析装置を用い、オーブンで試料を加熱することで放出される分子を測定しています。
するとアミノ酸の証拠は見つからなかったものの、代わりに、火星で見つかった最大の有機化合物が発見されたのです。
これは何を意味するのでしょうか?