BGMが合わないと生産性が低下する
カフェで流れるジャズ、アパレルショップのアップテンポなポップス。
私たちは無意識のうちに、さまざまな場所で音楽に囲まれて暮らしています。
特に職場では「音楽があるとリラックスできる」「モチベーションが上がる」と感じる人も多いかもしれません。
実際、音楽は気分の向上やストレス緩和に効果があることがこれまでの研究でも示されてきました。
コロナ禍以降に増えてきたリモートワークにより、自宅で好きな音楽をかけながら作業をしている方も少なくないでしょう。
しかし今回の研究では「BGMはすべての従業員に常に良い効果をもたらすわけではない」という、従来の考えとは異なる結果が得られました。

研究チームは今回、オンライン上で166人のフルタイム労働者を対象に実験を行いました。
参加者は最初に、自分にとって理想的な音楽の特性(音量、テンポ、複雑さ、感情的強度)を評価します。
その後、異なるプレイリスト(明るく活発なポップス/落ち着いたスローテンポ曲)を聴きながら創造性を問う課題に取り組みました。
結果として、自分のニーズと一致しない音楽を聴いていたグループは、ポジティブな感情が減少し、精神的・認知的な疲労感が強くなっていることがわかりました。
つまり「自分に合わない音楽」は、気分を沈ませ、集中力を奪うのです。
さらに2つ目の調査では、実際に音楽が流れる職場(医療機関、小売店、食堂など)で働く68人を対象に、3週間にわたる日記調査が行われました。
参加者は毎日3回、音楽の印象・気分・集中状態・職場での行動などを報告しました。
その結果、「音楽が自分に合っていない」と感じた日には、仕事のペースが遅くなったり、職場への不満を同僚に話したり、備品をこっそり持ち出したりといった、会社にとってマイナスの行動が増えていたのです。
一方で、同僚を自発的に助けるようなプラスの行動は減少していました。
つまり音楽の選び方一つで、職場の雰囲気や生産性は大きく変わるのです。