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食べるだけでアッチの世界にイケる魚

2018.08.10 Friday

Credits: Brian Gratwicke / 「ドリーム・フィッシュ」として知られる魚「サレマ・ポーギー」
Point
・頭部に「LSD」のような幻覚作用をもつ成分を含む魚が存在する
・「ドリーム・フィッシュ」として知られるその魚だが、すべての個体にその毒性があるわけではない
・その作用の原因が「魚自身」にあるのか、その「食事」にあるのか科学的に解明されていない

このどこにでもいそうな小さな魚は、大きな秘密を抱えています。その頭には、人をLSD摂取時のような「幻覚状態」にさせる物質が多量に含まれているのです。

「ドリーム・フィッシュ」としても知られるこのタイ科の魚の名前は「サレマ・ポーギー」。主に地中海からアフリカの東海岸にかけて生息しています。その毒性は科学的に解明されているわけではありませんが、古代ローマの人々が、その幻覚作用を「娯楽」や「儀式」に用いていたことが報告されています。アラビア語では「夢を創り出す魚」といった意味の名前を持つことから、昔の人がその効力を知っていたことがうかがえます。

「頭部」に、そのような危険な成分を含むこの魚ですが、その「体」は全く危険ではありません。それどころか、ローズマリーやコショウを用いて調理され、伝統的な地中海料理として愛されている程です。

Credit: gourmetbalance / 調理されたサレマ・ポーギー

サレマ・ポーギーの幻覚症状は “Ichthyoallyeinotoxism(イクシオアリエイノトキシズム)” と呼ばれ、強く鮮明な幻覚により、発症した者は時として非常に危険な症状に陥ります。サレマ・ポーギーが世間に広く知られることとなったきっかけは、2006年にこの魚に関する研究が発表されてから。そこには、コート・ダジュールにてサレマ・ポーギーを食した2人の男性の幻覚症状が紹介されていました。

片方の男性は「人が叫び、鳥がうるさく鳴く」といった「幻聴」を体験。さらにもう片方の男性は、「巨大な節足動物」が車の周りに現れたため、運転を続行することが不可能になったとのことです。

さらに、科学的な研究が行なわれたわけではありませんが、最も有名なのは写真家ジョー・ロバーツ氏の例です。彼はその幻覚作用を知った上で、自らサレマ・ポーギーの頭部をパンプキン・シチューとともに食しました。それほど鮮明ではなかったようですが、彼もまた「幻覚症状」を体験しました

そしてそれは、ロバーツ氏にとって悪い体験ではなかったようで、彼は後に次のように語っています。

「完全にSFの世界だ。飛行機のように操ることができる、見たこともない車があったよ」

なぜこの魚で「トリップ」できるのかについては、今のところ全く解明ができていません。しかし、すべてのサレマ・ポーギーの頭部が毒性を持っているわけではないことや、季節によっても毒性に偏りがあることから「魚そのもの」ではなく、その「食事」に原因があると考えられています。

いずれにせよ、サレマ・ポーギーの頭部を食べて危険な状態に陥ってしまった人物がいることは事実。ロバーツ氏のような命知らずではない限り、面白半分で食べることは避けたほうがよさそうです。

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via: zmescience / translated & text by なかしー

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