連続爆発の影響が暗黒物質と暗黒エネルギーを“演じる”

「暗黒物質」や「暗黒エネルギー」は従来、宇宙の構造形成や加速膨張を説明するために不可欠とされてきました。
しかし、リチャード・リュー博士の新しい理論では、これらの謎の成分を“常にそこにある”ものとしては考えません。
代わりに、「バースト(特異点イベント)が起こったごく短い瞬間だけ、その役割を果たす」という発想を打ち出しています。
どういうことでしょうか?
以下にその仕組みをイメージしやすいようにまとめます。
加速膨張(暗黒エネルギーの代わり)
一般的な宇宙論では、宇宙のあちこちに遍在する“暗黒エネルギー”が空間を押し広げ、加速膨張を引き起こしていると考えられています。
ところがバーストモデルでは、この「押す力」は常時存在するのではなく、集中したスパートとして働きます。
すなわち、バーストが起きる瞬間にだけ、宇宙全体を外側へ「ぐいっ」と押し出すわけです。
たとえるなら、マラソンランナーが適宜ダッシュ(全力疾走)を取り入れ、その合間にペースを落として走るイメージです。
遠くから見ると平均的には一定速度で走っているように見えますが、実際には“ダッシュと小休止”の繰り返しなのです。
同様に、この“短いダッシュ”こそが「負の圧力(斥力)」として働き、一瞬で宇宙の膨張をブーストするというのが新理論の考え方です。
バーストが終われば押し広げる力は消え去るので、暗黒エネルギーが“常に充満している”わけではありません。
結果として、平均すると宇宙は“滑らかに”加速しているように見えるのです。
銀河形成と集団化(暗黒物質の代わり)
暗黒物質は、銀河の回転があまりに速いことや、宇宙初期に銀河が急速にまとまったことを説明するために提案されました。
通常は「目に見えない質量が常時そこにある」とされますが、バーストモデルでは考え方が異なります。
バーストが起こると、宇宙のあらゆる領域(銀河の外側も含む)に、一瞬だけ追加の質量エネルギーがばっと供給されます。
その一瞬は、外縁部にも“見えない重力源”が現れるため、星やガスを強く引き寄せ、あたかも暗黒物質が存在するかのように振る舞います。
バーストが終われば追加の質量エネルギーは消失してしまうのですが、そのときにはすでに星やガスが十分に集まって“銀河”という構造が安定している状態になっています。
いわば、建築の際に応援部隊が来て骨組みを手伝い、家が完成したら去っていくイメージです。
家ができあがった後は、もうサポートの姿は見えないけれど、立派に建った状態だけが残る――これが銀河や星団の姿に相当します。
バーストが担う“代行役”
こうしたバーストの繰り返しによって、暗黒エネルギーと暗黒物質が果たしているように見える役割を一時的に肩代わりできる、というのがこの理論の要点です。
私たちが今見ている「銀河同士が遠ざかりながら高速回転している」光景は、まるで見えない力がずっと働いているように思えます。
ところが実際には、それらは昔のバーストが瞬間的に発揮した力の“後遺症”かもしれないのです。
現在はもう消えているけれど、当時築かれた構造や運動だけが残っている――要するに、それを私たちは連続的な暗黒エネルギーや暗黒物質の作用と“勘違い”している可能性があるわけです。
もちろん、この仮説が本当に正しいかどうかは、まだ観測や実証を必要とします。
しかし、「なぜ今まで見つからないのか?」という暗黒物質・暗黒エネルギーの大きな謎に対して、「そもそも常時存在しているわけではないのだから、見つからないのは当然だ」と新しい回答を提示した点は、大きな注目を集めています。
もし今後の観測や理論がこの説を裏付けることになれば、私たちの宇宙観は大きく塗り替えられるかもしれません。