ビッグバンは存在しない? 新理論が宇宙は“連続爆発”で生まれたと主張
ビッグバンは存在しない? 新理論が宇宙は“連続爆発”で生まれたと主張 / Credit:Canva
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ビッグバンは存在しない? 新理論は宇宙が“連続爆発”で生まれたと主張

2025.04.25 18:00:44 Friday

アメリカのアラバマ大学ハンツビル校(UAH)で行われた研究によって、宇宙が膨張し続ける理由と、その背後で働くとされる見えない力――暗黒エネルギーと暗黒物質――に対する定説が根底から問い直されています。

何十年もの間、暗黒エネルギーが銀河同士をますます速く遠ざけ、暗黒物質が銀河をまとめていると考えられてきましたが、どちらも直接観測された例はありません。

そもそも私たちが目で確認できる星や惑星、人間などは宇宙全体のわずか約5%しか占めず、残りは暗黒エネルギーがおよそ70%、暗黒物質がおよそ25%だと推定されています。

しかしこの「ダークユニバース」像は本当に正しいのでしょうか――もし計算が間違っていたら、もし別の仕組みが働いていたら?

そこで登場するのがリチャード・リュー博士の大胆な新提案「時間特異点理論」です。

博士は、暗黒エネルギーも暗黒物質も一切使わずに宇宙の成長と銀河の振る舞いを説明できるかもしれないと主張し、宇宙はときおり起こる“ミニ・ビッグバン”のような短いバースト(爆発的な膨張)で拡大すると考えました。

これらの突発的出来事は「一時的時間特異点」と呼ばれ、ほんの一瞬、宇宙全体を物質とエネルギーで満たして膨張率を跳ね上げます。

バーストが終われば余分なエネルギーは姿を消し、次のバーストまで宇宙は静かに落ち着きます。

まるで宇宙の心拍やストロボの閃光のように、エネルギーは一瞬だけあらゆる場所に現れてすぐ消えるため私たちは直接気づきませんが、宇宙史を通じて複数の「脈動」が積み重なれば、観測される膨張や構造形成を十分に生み出せる――常時存在する暗黒エネルギーや暗黒物質を仮定せずとも、というのが博士の主張なのです。

この斬新な理論は、暗黒成分に頼らず宇宙を説明できるのでしょうか?

研究内容の詳細は2025年3月21日に『Classical and Quantum Gravity』にて発表されました。

Are dark matter and dark energy omnipresent? https://doi.org/10.1088/1361-6382/adbed1

連続爆発モデルのしくみを解剖

連続爆発モデルのしくみを解剖
連続爆発モデルのしくみを解剖 / Credit:Canva

宇宙は一度きりの大爆発(ビッグバン)から始まった」というのが、これまで最も広く受け入れられてきた見方です。

実際、ビッグバン理論は多くの観測(宇宙背景放射や元素合成、銀河分布など)と整合性が高いとされてきました。

しかし一方で、“暗黒物質”や“暗黒エネルギー”といった未発見の存在を前提にしないと、なかなか説明がつかない謎も数多く残っています。

「ビッグバンはあったけど、その後の物質やエネルギーは常に同じように広がっているわけではないのでは?」という問いは、近年ますます注目を集めるテーマの一つとなっています。

その中で注目を浴び始めたのが、「単発のビッグバンではなく、何度かにわたる離散的な爆発(バースト)が宇宙を成長させてきたのかもしれない」という新モデルです。

もしこれが正しければ、暗黒物質や暗黒エネルギーが常時存在するわけではないのに、観測される膨張の歴史や巨大な構造形成を説明できる可能性がある、と主張しています。

以下では、この「段階的バースト」モデルを大まかに“5つのステップ”に分けてご紹介します。

あくまでイメージ重視の解説ですが、ビッグバン理論との相違点を比較しながら読むと、その発想のユニークさが見えてくるはずです。

第一段階:長い静寂期

通常の物理法則が働く限り、宇宙はごく緩やかに膨張していきます。

ここでは“暗黒エネルギー”や“暗黒物質”と呼ばれる不可思議なものは見当たりません。

私たちが知る銀河や恒星、ガスといった通常の物質だけが存在しており、時間の経過とともに少しずつ空間の広がりを感じる――そんな状態が長く続くのです。

第二段階:突然訪れる“大バースト”

ところが、ごくまれなタイミングで「時間特異点」という現象が起こります。

これは、想像を絶するほど短い時間内に宇宙全域へ膨大な質量とエネルギーが一気に流れ込む、いわば無数の“ミニ・ビッグバン”が同時多発するようなイベントです。

まさに嵐のように物質とエネルギーが空間を満たし、その継続時間はまばたきより短いかもしれません。

第三段階:一瞬で進む“膨張ブースト”

この大バーストの瞬間、宇宙の“布”が一気にふくらみます。

物理学では、こうした「押し広げる力」をしばしば“負の圧力”と呼び、暗黒エネルギーの効果に似ていると説明されます。

イメージとしては、風船に急に強く息を吹き込むと一瞬でサイズが大きくなるのと同じです。

このとき宇宙がジャンプするように膨張し、結果的に“通常の物質”だけでは説明しづらいほど加速的な広がりを見せるのです。

第四段階:銀河の種がまかれる

バーストによって宇宙全体へほぼ均一に物質がばらまかれますが、わずかに“むら”が生じます。

密度がほんの少し高い場所ができると、そこは重力で周囲の物質を引き寄せ始めます。

数百万年から数億年という長い時間をかけて、こうした濃い部分が徐々にまとまり、最終的に銀河や星団などの大規模構造へと成長していくのです。

いわば、各バーストのたびに“宇宙の種”がまかれているようなイメージでしょう。

これ自体は従来のビッグバン理論で語られる「原初ゆらぎ」の役割とよく似ています。

第五段階:再び静寂へ… そして繰り返し

バーストが収まると、一時的に増えたエネルギーは薄れ、宇宙には再びのんびりした膨張期がやってきます。

しかし、次のバーストが起これば再度“大ジャンプ”が起き、新たな物質が供給されます。

これが何度も重なると、膨張の歴史はなめらかな曲線ではなく、一段ずつ上へ飛び上がる“階段状”になるわけです。

こうして見てみると、「ビッグバン+暗黒エネルギー」という従来の描き方が“坂道を登り続ける”イメージだとすれば、この“段階的バースト”モデルは“階段を上がっている”イメージに近いといえます。

どちらも結果的に宇宙が大きくなる点は同じですが、その過程が連続か不連続かで大きく異なるのです。

もし本当に“段階的な大爆発”があったなら、私たちが思っているよりも宇宙の歴史はダイナミックで、しかも暗黒物質や暗黒エネルギーを絶えず用意しなくても説明が可能になるかもしれません。

では理論が正しいとしたら、暗黒物質や暗黒エネルギーの正体とは何なのでしょうか?

次ページ連続爆発の影響が暗黒物質と暗黒エネルギーを“演じる”

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