痛み消失=完治?その思い込みが再発を呼ぶ

足首の捻挫は、スポーツ外傷のなかでも最も多いといわれるケガです。
サッカーやバスケットボールなど、切り返しやジャンプを伴う競技はもちろん、普段の生活でも何かの拍子に足首をひねってしまうことは珍しくありません。
ところが、この捻挫は「1週間程度で痛みが引くから大丈夫」と軽視されがちで、その結果、リハビリを十分に行わずに早期復帰をして再び捻り、重症化や慢性的な不安定感に悩まされる事例が多いのです。
実際、過去の研究では捻挫の再発率が50%以上とも報告されており、「単純なケガ」というイメージとは裏腹に、長引くリスクを秘めている点が問題視されてきました。
従来、足首捻挫の回復度合いを評価する方法はいくつか提案されてきましたが、多くが「痛みの程度」や「見た目の腫れ」など主観的な指標に依存しており、客観的なデータに基づく確かな復帰ガイドラインは存在しませんでした。
そのため、靱帯が伸びきったままだったり、微妙な部分断裂が残ったりしていても、痛みが軽減しただけで「もう大丈夫」と判断されることがしばしば起こっていたのです。
さらに、近年の研究では足首が不安定なまま競技に復帰すると、膝や腰など他の部位にも負担がかかり、将来的に別のトラブルを誘発する危険性が指摘されています。
こうした状況を踏まえ、「足首の捻挫は軽傷」「痛みが収まった=治った」という既成概念を覆すような定量的な評価手法が求められてきました。
そこで今回研究者たちは、超音波検査によるストレステストを用いて靱帯の回復プロセスを継続的に計測・記録し、軽度・中度・重度という捻挫の重症度別に「靱帯が安定するまでどのくらいの期間を要するのか」を具体的に示そうと試みました。
そうすることで、これまで曖昧だった“靱帯の治る速度”を初めて客観的に示し、再発防止や適切な復帰時期の判断につなげることが期待されています。
次のセクションでは、どのように実験が行われ、どのような結果が得られたのかを詳しく見ていきましょう。