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脳が「現実と想像」をどうやって区別するか判明! (3/3)

2025.06.06 17:00:40 Friday

前ページ頭の中の映像を「本物」に変える脳の裏ルール

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“現実を分ける線”は動く――医療とVRが狙う次の一手

“現実を分ける線”は動く――医療とVRが狙う次の一手
“現実を分ける線”は動く――医療とVRが狙う次の一手 / Credit:clip studio . 川勝康弘

以上の実験から、視覚信号の強度(=想像+知覚の合計値)を現実かどうかの基準として利用していることが示唆されます。

ダイクストラ博士(研究主導者)は「我々の発見は、脳が想像と現実を区別する際に感覚信号の強さを利用していることを示しています」とコメントしています。

この仕組みにより、普段は想像上のイメージ(信号は弱い)と現実の知覚(信号が強い)を混同せずに済んでいるわけです。

一方で今回の結果は、なぜ人はときに現実と想像を取り違えてしまうのかという謎にも光を当てます。

脳が現実を見極めるネットワーク(紡錘状回と前部島皮質を中心とする回路)が正常に機能しない場合、現実と空想の境界が崩れてしまう可能性があります。

例えば紡錘状回が本来より過剰に活動してしまうと(いわば“メーターの誤作動”が起これば)、存在しないはずのものが鮮明に感じられて幻覚につながるかもしれません(想像の信号が強すぎる場合)。

また逆に、前部島皮質など「現実かどうか」を判断する側の見落とし(判定を行う閾値システムがガバガバになる場合)によって内部信号を遮断し損ねても、やはり想像が現実のように紛れ込んでしまう可能性があります。

実際、統合失調症などでは自分の頭の中の声が他人の声に聞こえてしまう現象(幻聴)が知られており、今回特定された前頭前野ネットワークの機能不全がそうした現実検討の失敗に関与している可能性があります。

研究者らは、この発見が「何が現実で何が非現実か」を見極める脳内プロセスの理解を深め、将来的には精神疾患の診断・治療法の進展につながることを期待しています。

さらに本研究の知見は、仮想現実(VR)技術の改良にも役立つ可能性があります。

人間の脳が「想像」を「現実」と錯覚しないギリギリの境界ラインがどこにあるのかが分かれば、VR体験の没入感を高めつつ現実との区別は保てるような絶妙なコンテンツ設計が可能になるかもしれません。

実際、フレミング教授は2023 年の関連研究でのコメントにおいて「近い将来、脳への刺激やVR技術が非常に強力な感覚信号を生み出すようになれば、現実と非現実を見分けることは我々が思うより困難になるかもしれない」と指摘しています。

現実と仮想の境界を超えない範囲でどれだけ内部信号を増強できるか――今回明らかになった「現実メーター」のしきい値は、今後のVR研究開発にとって貴重な指標となるでしょう。

最後に、今回の研究は「想像」と「現実」のあいまいな関係を脳全体の活動マップとして示し、中位視覚野に“強度メーター”があることを詳細に実証しました。

脳の中位視覚野で検出される現実信号と、前頭前野で下される現実/非現実の判定……この二段構えのシステムこそが、私たちが日々「頭の中のリンゴ」と「目の前のリンゴ」を混同せずに済んでいる理由なのです。

一方でこのシステムが揺らいだとき、人は自分の内部のイメージを現実のものと錯覚してしまう――そんな想像と現実のあいまいさを生み出す脳内メカニズムが、今回つまびらかに描き出されました。

今後この発見を足がかりに、人間の脳に備わる「現実モニタリング装置」の全容がさらに解明されていくことでしょう。

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脳が「現実と想像」をどうやって区別するか判明! (3/3)のコメント

ゲスト

幻覚ってものすごいリアルなんですけど、リアルすぎるので状況選ばないと簡単にバレますよね。
ド近眼な私の視界にいきなりくっきりはっきりした人の顔とか出てこられても…。
「なんでお前そんなくっきりしてるん?」で終わりですから。
「あっ、この映像目を通ってないな。」ってすぐに分かってしまう。

ゲスト

明晰夢のリアリティですか?

ゲスト

紡錘状回は、ふくすいじょうかい ではなく ぼうすいじょうかい

ゲスト

現実と知覚表象、非現実と想像(と想起)は異なる概念なので区別して使うべき

ひこさん。

タソロタン、谷川龍一の、本能は、忘れない人々達の、ヒストリーとは?ハンガルー。のっぽ兄さん。以上福田耕平。以上。

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