チンパンジーは“意味のないマネ”もする? それは「つながり」の証かもしれない
分析の結果、草を耳や肛門に挿す行動の拡散パターンは「個体が他の仲間の行動を見てマネした」とする社会的学習モデルに一致しました。
特に、草を肛門に挿すという突飛な行動については、統計モデル上、ほぼすべてが社会的模倣によるものと支持されています。
つまり、チンパンジーたちは生きるためではなく、ただ意味のない行動を「マネして」いたのです。
ではなぜ、彼らはこんな奇妙な行動をするのでしょうか?

研究者の1人であるEdwin van Leeuwen氏は、行動の起点となった2つのグループにはある共通点があったことに気づきました。
それは、両グループの世話係が耳にマッチ棒や草を入れて耳掃除をする様子を日常的に見せていたということです。
他のグループの世話係はそういった行動をしていなかったため、最初に「草を耳に挿す」という行動が人間の模倣から始まり、そこから仲間同士の模倣を通じて広がった可能性があります。
さらに注目すべきは、「肛門に草を挿す」という行動の出現です。
これはさすがに人間の模倣ではなく、チンパンジーが“オリジナルにアレンジを加えた”可能性があります。
まるで、流行を真似したうえで「自分らしいスタイル」に進化させる人間のファッションセンスのようです。
研究チームは、この草ファッションが社会的なメッセージとして機能している可能性を指摘しています。
つまり、草を耳やお尻に挿す行動は「私はあなたと同じだよ」「仲間になりたいよ」という無言のサインかもしれません。

人間の文化も、そうした“意味のない模倣”から始まることがあります。
TikTokのダンスやスラングから、流行りの眉毛の形まで。
それ自体に実用性はなくても、誰かとつながるための道具として発展してきたのです。
この研究は、チンパンジーもまた同じように社会的な目的で行動を模倣し、それが文化として定着する可能性を示しています。
もしそうならば、私たちの「文化」や「ファッション」のルーツは、もっと原始的で、もっとシンプルな「マネしたい」という衝動にあるのかもしれませんね。
お尻に物を…ゴクリ…。