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Credit: Antiquity(2025)
history archeology

2000年前の硬貨、ベトナム〜バングラデシュまで交易圏が広がっていたことを証明

2025.08.12 20:00:12 Tuesday

東南アジアの古代社会は、想像以上に広く結びついていたようです。

シンガポール国立大学(NUS)の最新研究で、西暦1千年紀初頭(およそ紀元1年から1000年頃)に作られた銀貨が、バングラデシュからベトナムまでの広い範囲で出土しており、当時の交易圏が驚くほど遠くまで広がっていたことが明らかになったのです。

特に注目すべきは、直線距離で3000キロ以上離れたバングラデシュとベトナムで発見された2枚の硬貨が、同じ「鋳型(ダイ)」で作られていたという発見です。

これは古代の通貨が国境を越えて流通し、政治や経済をつなぐ重要な役割を果たしていたことを直接示す証拠となります。

研究の詳細は「Currents of currency: utilising die studies to trace Rising Sun/Srivatsa coin distribution in first-millennium AD, Southeast Asia」という論文タイトルで、学術誌『Antiquity』に掲載される予定です。

Ancient ‘Rising Sun’ coins show connections from Bangladesh to Vietnam https://phys.org/news/2025-08-ancient-sun-coins-bangladesh-vietnam.html

東南アジアを結んだ古代貨幣ネットワーク

研究者たちは今回、東南アジア本土各地で発見された245枚の銀貨を精密に分析。

その多くは片面に「昇る太陽(Rising Sun)」、もう片面に「シュリヴァツァ(Srivatsa)」と呼ばれるインド古来の宗教シンボルが刻まれていました。

シュリヴァツァは、古代インドの宗教・神話に登場する文様で、繁栄や幸福の象徴とされます。

仏教やヒンドゥー教の初期遺物にも見られ、宗教的・文化的なつながりを示す重要なモチーフです。

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発見されたコイン/ Credit: Antiquity(2025)

これらの銀貨は「ダイ」と呼ばれる型を使った鋳造方式で作られました。

無地の金属円盤を型に押し当て、両面に模様を刻印する技術です。

この方法は同じ型を繰り返し使えるため、遠く離れた地域で同じデザインの硬貨が流通する可能性があります。

古代中国の史書には、紀元2世紀の段階で東南アジア諸国が近東から中国に至る交易ネットワークの重要拠点であったことが記録されています。

発掘調査でも、ローマのガラス器、インドの宝飾品、ペルシャや西南アジア、中国の陶磁器など、多様な輸入品が出土しており、広域的な交易の存在を裏づけています。

しかし、こうした銀貨は、ローマや中央アジアの古代通貨に比べて研究が進んでおらず、多くの場合、現代の国境を基準に分類されてきました。

そのため、本来の経済的・文化的ネットワークの全貌は見えていませんでした。

次ページ3000キロを超えて届いた「同じ型」の証拠

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