家族に無視されているリーダーは「部下を放任する」と判明
調査の結果、研究チームは非常に明確なパターンを発見しました。
まず、家庭内で無視されているリーダーは、職場で疎外感を強く感じる傾向にあることが明らかになりました。
これは、仕事に対する意味や目的を見失い、感情的に距離を置いてしまう心理状態です。

さらに、こうしたリーダーたちは、放任型のリーダーシップをとる傾向が高いことも分かりました。
具体的には、チームメンバーとの議論を避け、部下の提案に無関心になり、意思決定にも消極的になるのです。
当然ながら、このようなリーダーの態度は、当然ながら部下にも影響を及ぼします。
研究チームは、放任的なリーダーシップにより、部下の「顧客への自発的な配慮や責任感)」が低下する可能性があることを指摘しています。
ではなぜ、このような影響が生じるのでしょうか?
研究チームは、家庭内での問題に対処するために、リーダーが多くの感情的・認知的リソースを消耗してしまうことが原因であると説明しています。
家庭の空気を良くするためにエネルギーを注ぎすぎると、精神的・感情的に疲弊し、職場に使うリソースが残らず、リーダーとしての関与や意思決定力が低下してしまうというのです。

一方で、すべてのリーダーが同じように影響を受けるわけではありませんでした。
研究では、「ポリティカル・スキル(Political Skill)」が高いリーダーは、家庭内での排斥の影響をうまく緩和する傾向が見られました。
このスキルは、社会的な状況をうまく読み取り、人間関係をスムーズに構築・調整できる能力のことです。
ただし、この研究にも限界があります。
たとえば、調査の対象がホテル業界に限定されており、他の職種でも同じ影響があるのかは今後の課題です。
また、家庭内での排斥の内容や深刻度についても、より詳細な分類が必要かもしれません。
それでもこの研究は、これまで「個人的な問題」として軽視されがちだった家庭内の人間関係が、実は職場の生産性に直結する重要な因子であることを示した貴重な成果と言えるでしょう。
リーダー支援のあり方を見直す上では、家庭と仕事のつながりを包括的に捉える視点が今後さらに求められていくでしょう。